予備試験短答式試験も間近である。そこで、今回は、受験生の多くが手が回りにくい民法の家族法の論点を取り上げよう。(離婚に関する法的問題であるから、司法試験受験とは無関係の方にとっても興味深い問題かもしれない。)


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有責配偶者からの離婚請求の可否

離婚には、協議離婚(民法763条)、調停離婚、審判離婚、裁判離婚(770条1項)などがある。実際のほとんどが協議離婚である。裁判離婚は協議離婚や調停離婚等が成立しなかった場合のいわばもつれにもつれた場合だけ到達する手続である。民法上規定されているのは、協議離婚と裁判離婚である。よって、司法試験で狙われるのもこの二つということになる。(なお、家事事件手続法が調停前置主義を採用している点は択一試験で聞かれるかもしれないので押さえておこう。)
中身に話を進めよう。
今回取り上げたいのは家族法の中でも一番重要にして困難な問題とされる有責配偶者からの離婚請求の可否の問題である。有責配偶者とは、前記5号所定の事由につき責任のある一方配偶者のことである(Ex.浮気をした張本人)。これは、裁判離婚の770条1項のうち、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」の適用範囲の問題である。
以下では、詳細は各自の基本書の熟読に任せることにして、受験に必要な範囲での最小限の説明にとどめることとする。

1.踏んだり蹴ったり判決
まず、従来の判例は一貫して有責配偶者からの離婚請求を否定してきた。その中でも特に有名なのが、いわゆる「踏んだり蹴ったり判決」(最判昭和27年2月19日判決)である。
その判示を引用する。「論旨では本件は新民法七七〇条一項五号にいう婚姻関係を継続し難い重大な事由ある場合に該当するというけれども、原審の認定した事実によれば、婚姻関係を継続し難いのは上告人が妻たる被上告人を差し置いて他に情婦を有するからである。上告人さえ情婦との関係を解消し、よき夫として被上告人のもとに帰り来るならば、何時でも夫婦関係は円満に継続し得べき筈である、即ち上告人の意思如何にかかることであつて、かくの如きは未だ以て前記法条にいう「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するものということは出来ない、…上告人は上告人の感情は既に上告人の意思を以てしても、如何ともすることが出来ないものであるというかも知れないけれども、それも所詮は上告人の我儘である。結局上告人が勝手に情婦を持ち、その為め最早被上告人とは同棲出来ないから、これを追い出すということに帰着するのであつて、もしかかる請求が是認されるならば、被上告人は全く俗にいう踏んだり蹴たりである。法はかくの如き不徳義勝手気儘を許すものではない。道徳を守り、不徳義を許さないことが法の最重要な職分である。総て法はこの趣旨において解釈されなければならない。」
2.判例変更
上記判示は至極妥当なものともおもえるが、他方で、完全に形骸化した婚姻状態の継続を法が強制し続けると、婚姻制度自体の存在意義が疑われてくる。婚姻の空洞化を防がなければらない要請もある。そこで、判例は、次の三つの要件の下、有責配偶者からの離婚請求を認めるに至った。すなわち、①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当長期間に及び、②その間に未成熟の子が存在しない場合には、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないと解される。

※参考文献
「親族法相続法講議案(7訂版)」司法協会 68頁~80頁
まとめ
試験対策上は、次の部分だけ押さえておけばよかろう。
【有責配偶者の離婚請求の要件】
①別居が相当長期間
②未成熟子なし
③離婚請求が著しく社会正義に反する特段の事情がないこと
(※なお、特に③の要件について要件事実論的な整理をしておくことをお勧めする。)
以上