古典物語1        | 先祖を尋ねて

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姓氏のご紹介はほぼ終わったので、日常雑事、架空の物語、政治経済など気儘に書き込む。
参考資料、文献などは要所に集約して示す。

古典物語1        
先祖

十亀氏系図の謎1


 先祖のブログを書いていて大きな謎の二つに乗り上げた。
1つは:藤原氏の中心人物、「不比等」の扱いが、虫けら同然である。
系図では「淡海」の号だけ、武勇伝には一言もない。
2つは:宇都宮氏は上野国(栃木県)で、22代500年も栄えた大家系で、
   その累系は全国に及ぶ。しかし、藤原氏から宇都宮氏になる時は、
   同族から極めて厳しい扱いを受けたはずだが、その登場人物の
   名前さえ曖昧にされている。これは中身が濃いので明日以降とする。

竹取物語1.png
図10.竹取物語1

1を読み取る資料は、『竹取物語』で日本最古の物語であり、
「物語の祖(おや)」でもある。良く知られおり説明の必要はないと思う。
現在は富士山噴火の記録から、科学論文にも引用される古典である。

a.モデル:
 ①かぐや姫:『古事記』に垂仁天皇の妃として記載される、
  大筒木垂根王(おおつつきたりねのみこ)の娘「迦具夜比売命」(かぐやひめのみこと)

 ②5人の貴公子かぐや姫に振られた男達:
  壬申の乱(672年)で活躍した実在の人物が登場していることも本作品の特徴である。
  5人の貴公子のうち、最も卑劣な人物として描かれる車持皇子は藤原不比等とされ、
  不比等は天智天皇の落胤との説があり、母の姓が「車持」であるためといわれる。
  「卑怯である」と書くことによって暗に、藤原氏を批判しようとする作者の意図がある。

  阿倍御主人、大伴御行、石上麻呂。石作皇子のモデルは多治比嶋と推定される。

竹取物語2.jpg
図11.竹取物語2

b.成立年代:平安時代前期の貞観年間 - 延喜年間、特に890年代後半

   引用されている文献=『万葉集』巻十六の第三七九一歌、『源氏物語』「絵合」巻、
   『丹後国風土記』、『今昔物語集』、謡曲『羽衣』、昔話『天人女房』、『絵姿女房』、
   『竹伐爺』、『鳥呑み爺』。 更に10世紀の『大和物語』、『うつほ物語』や
   11世紀の『栄花物語』、『狭衣物語』などに『竹取物語』への言及が見られ、
   遅くとも10世紀半ばまでに成立した。舞台は奈良時代である。

c.作 者: 最近の研究では作者は紀貫之である可能性が高く、
文才があり時代的にも合い、
     藤原氏に恨みを持つ要因を持っているゆえに有力視されている。
     紀貫之については既に数十回もご紹介した。伏せていて御免なさい。
    その他の有力候補の条件としては、
   ①当時権力を握っていた藤原氏の係累ではなく、
   ②漢学・仏教・民間伝承に精通し、仮名文字を操ることができ、
   ③和歌の才能もあり、
   ④貴重であった紙の入手も可能な人物で、
   ⑤性別は男性だったと推定されている。
   ⑥上流階級に属しており、貴族の情報が入手できる平安京近隣に居住し、
   ⑦物語に反体制的要素が認められることから、
    源順、源融、遍昭、紀貫之、紀長谷雄、菅原道真など数多くの説がある。

 藤原氏を正面から批判できなかったから、『竹取物語』で表現したのである。
 不比等の項は終わる。