かつてヤシカはカールツァイスと
ライセンス契約しCONTAXブランド
のカメラを製造していた。
その後、京セラに吸収されCONTAX
およびCarl Zeissブランドも引き継ぐ
ことになったが、YASHICAブランド
は消滅してしまった。
(ただし海外向けには継続使用してた)
ヤシカが京セラに吸収された過渡期の
1984年に発売されたのがT AF-Dで、
国内YASHICAブランド最後のシリーズ
となったオートフォーカスカメラである。
天面にこそ商品名のYASHICAとあるが、
レンズの脇にはCarl Zeissが燦然と輝き、
右下には控えめにKYOCERAが入る、
3つのブランド名が同居したカメラだ。
その後、京セラはCONTAXブランドを復活。
今までにない描写力のCarl Zeissレンズを
武器に、CONTAX T2やT3といった名機を
世に送り出して、高級コンパクトカメラの
ブームを牽引していった。
その萌芽となったYASHICA T AF-Dだが、
レンズ以外のスペックと、カメラ自体の
見た目に関して言えば“高級”というには、
残念ながら程遠い…
高級コンパクトフィルムカメラ夜明け前。
そんな時代の徒花と言えるカメラです。
試し撮りはレトロな造形を残す上野駅。
リバーサルフィルムProvia100Fを使用。
改造後、明るく開放的な空間になった、
鉄骨屋根がお洒落な中央改札前。
atreの文字にピントが合ってクッキリ
と見える写りになった。
上野駅にはピントが合わずボヤッと写る。
ハイキーかと思うほど明るいがレンズの
特性なのか、露出が合っていないのか。
上野駅のアール角の庇と縦長の窓。
明るい時の周辺減光が思いの外キツく出る。
不忍口ガード下の白く美しいアーチ柱。
高架屋根の赤サビとの対比に萌える。
何枚かに1枚ピントが来たときは、
さすがのレンズ性能だが、それを
ファインダーから確認できない
もどかしさがあるのも事実。
その1枚を期待して楽しむのが、
このカメラの魅力のひとつ、
と言えるかもしれない。