もう五十年以上前のこと。



学生運動の終わりの頃だったが

まだまだ

ヘルメットやら角材やらの

ファッション?が

そこいら中に流行っていた頃、


オッサンは

「朝日洋上大学」というのに

参加した。(新聞配達を1年して)

(洋上と言っても船に乗ったのは、イギリスからオランダに渡った時だけだったが)


ヨーロッパ七カ国を周るというものだった。


朝日新聞社が主催者。

参加者は学生ばかり。


JTBの添乗員の人とか

新聞社の人が同行して

ロンドン大学や日本大使館とかを

訪問することから始まった旅。



ちょうど始まった

ミュンヘンオリンピックの開会式会場の外で

選手団を見ていたのも

思い出のひとつ。



西ドイツ(当時)国内を

観光バスで移動していた時、

みんなの席にマイクが回ってきて

全員ひとりひとりが

何かやらないといけなくなった。


まだカラオケなんかは無い時代…


それでも

ほとんどの人はアカペラで

自分の好きな歌を歌う人が多かった。



ところが

朝日新聞社のひとりの人が

「じゃぁ、ボクは詩を朗読します!」

と言って

いきなり何も見ないで


「あはれ秋風よ〜ココロあらば伝えてよ 男ありて今日のゆうげにひとり秋刀魚を食いて 思いにふけると…」


そんな文章から始まる詩を

朗々と語り始めた。



そのカッコいいこと。

「朗読って粋だなぁ!」




帰国後

すぐ本屋に行き

「佐藤春夫詩集」を買って

その「秋刀魚の歌」を

丸暗記したのは

言うまでもない。(笑)



カラオケなんかまだ無い頃だったし

詩を朗読するというのが

すごく新鮮で

感動したのだった。



最近

たまたまYouTubeで目にした

「秋刀魚の歌の朗読」に

五十数年前のことが

メラメラと

蘇ってきた。






当時は


詩の内容など何も考えず


ただ暗記したのを


ボソボソつぶやいていた。





その後何十年も経って


京都法然院にある


谷崎潤一郎の墓などを訪れたりしてた時に


知ったこと。



「秋刀魚の歌」に出てくる女性と子どもは、


谷崎潤一郎の最初の夫人とその子であり


佐藤春夫とその後、結婚。



ヘェ〜、あの詩の裏には


そんなメロドラマみたいなことが


あったんだと驚いた。





そういうことを知って


改めて「朗読」を聴くと


何やら深〜いモノを感じる。





今日は


そんな秋っぽい話題で


お茶を濁しました。