田口ランディ著 「富士山」 文春文庫 2006年3月10日発行 読了
4編の短編集
青い峰
樹海
ジャミラ
光の子
「青い峰」は人間関係がうまくいかない若い男性が主人公で
コンビニエンスストアが舞台になっている
富士山が遠景に度々現れる
「ジャミラ」は住宅街で問題になっているごみ屋敷の主人公の老婆が
怪獣の「ジャミラ」に似ているので主人公の若者が名付けて呼んでいる
この住宅街も富士山が遠景に見えるところにあって
最後の章は動画を見るようなイメージで終わる
―くるりと踵を返すと、ジャミラは真っ赤に燃える富士山に向かって、
ぴょこたんぴょこたんと去って行く。
二度と振り返らなかった
もう永遠にジャミラには会えない気がした。僕らは捨てられたのだ
今日、ジャミラは、富士山に帰って行く
人間たちを残して
「樹海」は中学を卒業したばかりの男性4人が
中学卒業記念に 樹海探検に行く話である
舞台は富士山の近景にある
「ひかりの子」は女性がそれぞれの理由を持って
富士登山ツアーに参加した話である
テーマは胎児の命の尊さ、人間の命の尊さを
主人公の助産婦である看護師、流産した女性、ガンを患っている女性に語らせている
この「富士山」には「遠景と近景の富士山」 川村湊の解説がついている
その中で述べている、「富士山」は神話性のシンボル
般若や夜叉のような畏怖を感じさせる女性神。 それが「山の神」と称される
田口ランディさんの著書には深いテーマがあって
私は共感するが重たいテーマなので読んでいて苦しくなることがある
それでも手に取って読んでしまう、麻薬のようなものを感じる