大吉くんが寝たきりになってから数日はあまり元気がなく、不自由な身体に慣れていないようだった。
ほとんど身じろぎもせず、吠えることもなかった。
ただ、食欲だけはあった。
生粋の食いしん坊は土壇場に強いのかもしれない。

フードに大好物のサツマイモを細かく切って、丁寧に混ぜて手で食べさせる。
すると美味しそうに食べるのだ。
お水も針のない注射器のようなものに入れて寝たまま飲ませていた。
頭を持ち上げることすらできない状態。

その様子を獣医さんに電話すると、もしかするとある程度は回復するかもしれないとのこと。
さっそく車で向かった。
父に運転してもらい、私が抱っこして行った。
身体に力が入らないので、ベッドに横たえたままでは車の揺れがかなりの負担になると判断したからだ。

獣医さんに到着し、しばし順番を待って診てもらった。

「思ったよりも元気そうだね。」

意外な反応だった。
口の中や身体のあちこちを診て、おおよその健康状態が分かるそうだ。
特に口内の血色が良かったらしい。

「ステロイド剤を試してみましょう。」

劇薬なのだが消炎効果があり、椎間板ヘルニアで圧迫されて機能しなくなっている神経が回復するかもしれないとのこと。
レントゲンを見せてもらうと、軟骨が白く映っていた。
つまり硬くなっていて、それが神経を締め付けているようだった。
1日に1回、きっちりと容量を守って飲ませることにした。

それからまだ足に反射反応があるから、毎日10回でもいいから手足のストレッチをしてあげてくださいとのこと。
なるほど、いわゆるリハビリか。
人間も犬も一緒だね。
たとえ自力で動かせなくても、関節は動いた方がケガ防止にもなるだろう。

自宅に帰りステロイド剤を飲ませる。
するとどうだ!!
その日の夜には明らかに改善してきたのだ。

「ご飯をくれ!」

と元気に吠え、

「トイレしたぞ!濡れてるぞ!気持ち悪いぞ!」

とまたまた吠える。
そしてなにより、首をかなりの角度まで持ち上げることができるようになったのだ。
1日も経たずに。

これにはさすがに驚いた。
もしかすると、これは本当に回復するかもしれない。
そう期待するには十分な初日であったし、家族の顔には自然と笑みがこぼれ、大吉くんを中心にして楽し気な声であふれていた。



トイレに備えて毎晩大吉くんの隣で眠る私


毎晩2~3回起こされるのであった