小鳥たちがさえずり、爽やかでひんやりした空気に満ちた森の中。

やわらかな木漏れ日が地面に大小の円を歌うように描いていく。

仕立ての良い衣装に身を纏った青年が、白馬に跨りリズミカルに通り抜けていく。

よく見ると額にひし形の紋様が見える。

どうやら高貴な人物であるらしい。



そう、彼は名門ロスマンズ家の王子であった。

広大な森はロスマンズ家の領地であり、馬に乗って散策するのが日課であった。

しかし今日はいつもと少し様子が違う。

普段は物静かな青年だが、心なしかウキウキしているようだ。

平静を保とうとしているようだが、嬉しさは隠しきれないらしい。

王子はある場所へと向かっていた。