大吉とは、私が飼っているミニチュアダックスフンドのことである。我ながら、ずいぶんと縁起の良い名前を付けたものだ。偶然にしては良く出来すぎている。いずれ起こる様々な騒動を嘲笑っているかのようだ。
 
 大吉はまるで、未来を見通して私を良い方向へと導くかのような行動を取ることがある。病気でのたうちまわっていた頃、どれだけ救われたことか。さらには、自信を取り戻す大きなきっかけにもなってくれた。そういうわけで、大吉には今でも頭が上がらないのだ。
 
 出会いは、私が小学校の教師をしていた頃に遡る。約七年前のある日、ペットショップで我輩を飼えとにじり寄ってきたのだ。当時はまだ障害者手帳を持っていなかった。現在は障害者雇用で働いている。毎日がとても平穏で幸せな日々だ。大吉と出会った頃、まさかこんな未来が待っているとは夢にも思わなかった。
 
 私が躁うつ病を発症したのは、大学卒業間際の頃だった。もう二十年ぐらい経つ。本当はその当時まで遡って書きたいところだが、大吉のいない頃の話を書くのは気が引けるので、出会った頃からの出来事を書くとしよう。