出藍の誉れ


年末年始やお盆になると、訪ねて来てくれる卒業生がいます。

私の中では、関わった8000人近い子ども達の中で、私が人間的に本当に尊敬できる5人がいます。


少し前に書かせていただいた8年ひきこもったTくん、中学不登校から高校未入学、旧帝国大学に高3年齢で現役合格し、現在はその帝国大学で准教授をしているYくん、それと、この年末に訪ねて来てくれた3人の若者たちです。


3人は、いつも一緒に来てくれるのですが、今回はそれぞれ別行動で、私を訪ねて来てくれたのです。


この3人は、同じ学校で同じ学年で、本当に仲も良くて、帰ってきては一緒に飲んだりして、交流も続いているすばらしい仲間でもあるのです。

彼らは、10年前に高校を卒業し、その後、それぞれの道に進学して行ったのですが、塾で私と一緒に講師として、後輩たちに教えてくれていたのです。

塾を離れて3年から5年経つのですが、現在、Aくんは日本のゼネコン最大手の企画営業部、Hくんは外資系で日本では最大手になるコンサルタント会社のコンサルタント、Hくんは地域の基幹病院で医師として、それぞれ活躍している方々です。


在学中、そして、同じ講師として、また、同じ社会人として、話をしていて本当にすばらしいと、当時から私が感じていた若者達なのです。

一人はすでに結婚し、残り二人も、来年、再来年に結婚することが決まっています。

この結婚しない若者が増えている中で、20代で結婚も決まっています。


この3人が訪ねて来てくれたのです。

本当に有り難く、うれしいことでした。


この3人は、今回、私の体のことをどこかで聞きつけて、負担にならないように、かつ、それぞれの都合にあわせて、細かく連絡を取り合いながら、別々に私を訪ねて来てくれたのです。

一昨日来てくれたコンサルタントのHくんが、笑いながら教えてくれたのですが、バラバラに来る方が、負担は大きいけれど、きっと何回も来る方が私がうれしいだろうということと、かつ、3人の都合もうまく調整できるからと、計画的にわざとバラバラに来てくれたのです。

実は、帰ってきてすでに3人は会っていたらしいのです。

彼らは本当に人として尊敬できる若者で、いつ話していても礼儀正しく、素直で、思いやりあふれるのです。

昨日、来てくれたDくんに、いつもこうして気づかってくれるわけを聞いてみました。

そうしたらDくんはこんなことを言ってくれたのです。

先日、私を訪ねてくる前に、3人を含む高校の時の仲間と会ったときに、いつも塾に挨拶に行くという話になって、3人以外の友達が、「本当に塾の先生に3人は恵まれたよな。塾の先生のおかげで3人ともものすごく変わったよな」と言われたそうなのです。

私は3人とは、生徒として教えているときからの付き合いで、もう15年の付き合いになるので、あまりわからないのですが、周りの友達からは3人はものすごく人間的に成長したというのです。

しかも、塾の先生の話をしょっちゅうしていたというのです。

それを聞いただけで、ものすごくうれしかったのです。

3人とは勉強だけでなく、本当にいろんな話をしました。

そのことが、3人とも、社会に出てものすごく役に立っていると、今回、訪ねて来てくれて、3人ともが示し合わせたように言ってくれたのです。

 

そこで、社会人になって、今、現場で働いているときに、一番、必要な力は何だと思うかと聞いたときに、3人ともが同じ答えを言っていました。


素直であること


これが何よりも必要なことだと言うのです。

最初は仕事ができなくても、失敗しても、素直であれば吸収していけるので、どんどん成長していくことができる。

周りの先輩や上司も、素直な人間には、厳しく言っても、吸収してくれるから、どんどん教えてもくれるし、育てようともしてくれる。

素直でなく、変なプライドがあると、成長しなくなり、そこまでになる。

周りも扱いにくいため、育てようとする気持ちがうすれる。

だから、頭が良いとか、よく勉強している、努力していることも必要だけれど、素直であることが何よりも必要だと言うのです。


その通りだと、私も思います。

Aくんが言っていたのですが、私が松下幸之助翁の著書の『道をひらく』の中で、素直さが人を強く正しく聡明にする、ということが書かれていると、何かの時に話をしていたらしいのです。

そのことを3人ともが覚えていて、3人ともが松下幸之助翁の『道をひらく』をすぐに買って読んだと言うのです。

これが3人の「素直さ」なんだと、あらためて今回、思いました。

こんな素晴らしい3人の若者が、社会で活躍してくれていることが、何よりもうれしく感じたのです。


出藍の誉れとは、まさにこのことだ思い、3人に感謝の思いでいっぱいの、笑顔になれる大晦日になりました。




今年もお読みいただきありがとうございました。

お読みいただいている皆様にとって、来年がすばらしい1年になりますことを心よりお祈り申し上げます。

どうぞよいお年をお迎えください。