塾として何ができるか

「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた」授業が展開され、一斉授業以外に、ICTを使った調べ学習やグループ学習での対話的な授業も多くなっていることをお話してきました。

これは、学校の中で起こる様々なこと、例えば、浮きこぼれ・落ちこぼれといった学習についての問題、それが直接的に影響する受験以外にも、いじめ、不登校など、多くの問題に影響します。


そのために、今、学校では何が起こっているかを知る一つの手がかりとして、授業の様子について、お話してきました。


このような中で、塾は何ができるのでしょうか。塾はどのような役割を担えるのでしょうか。


これまで中学受験を中心に指導されている進学塾、特に大手の進学塾は、学校の先取学習をして、小6の途中から入試対策になるような形でカリキュラムを進めています。

そのため、浮きこぼれになることもありました。

中には、学習を先取りしているために、自分がいかにできるかをアピールする子どももいて、学校の授業の邪魔になることもあります。

このようなことは、少しはグループ学習などで活躍の場ができることで、ましになるかもしれません。


また、個別指導塾、自分で学習を進めていく自立型の学習塾では、学習状況にあわせて補完的なことができるのではないかと思います。

この点は、これまでと大きくは変わらないと思います。

落ちこぼれそうな場合は、個別指導塾、自立型学習塾などに行かれることは、効果的かもしれません。

ただ、塾に行ったから、わかるようになる、できるようになるとは言えないのです。

説明ばかりされていても、何も身につきません。

何がわかっていないのか、どこができていないのかを見極め、そこについて、演習と解説が必要なのです。

それを見極めてもらえるかどうかが、とても重要です。

塾としては、それをできれば、十分に今はまだ活躍の舞台もあると思います。


問題は、アクティブラーニング的な授業展開に対して、塾は、先取りをするか、復習として、わからないところをわかる、できるようにすることしかできない、ということなのです。


それだけで十分という意見もあるかもしれません。


ところが、そうとも言い切れないのです。


どうしてかというと、大学受験の変化はかなり大きいのです。


「総合型選抜」と呼ばれる入試で入学させる人数が、各大学とも増えてきています。

「総合型選抜」というのは、簡単に言えば、かつてのAO入試にもう少し学力を見るところが増えていると思っていただけるとわかりやすいと思います。

大学が求める学生像に合致する学生を、学力も含め、あらゆる角度から見て、合否を決める入試です。

国立大学でも多くの大学で力を入れています。

中には、共通テストが不要な大学もあるのです。


そうなると、総合的な力を身に着けていかなければなりません。

考えてみてください.


小学校以来、アクティブラーニングのような授業を受け、これまでのような学力だけでなく、グループ学習でのコミュニケーション力や協働的に学べる力、、調べ学習による自分で学ぶ力などを身に着けることは、この「総合型選抜」には向いていると思いませんか?


今後、この総合型選抜が増えていけば、学力だけをつけても対応はできないのです。

塾はこれまで、学力をつけるだけ、入試を合格させることだけに注力していればよかったのですが、それでは、総合型選抜には、とても対応ができないのです。


もう一つの大学入試の変化は「共通テスト」です。

明らかに、答えのない問題を日頃から考えておかなければ解けない問題が出題されるようになりました。


2022年世界史B 第4問 問3のような問題は、教科書を理解しているだけでは、解答しにくい問題であることは間違いありません。

問題は、第2次世界大戦のときに、日本の政権がファシズム体制であったとする見方と、ファシズム体制とは区別される体制であったとする見方があるがあることについて、それぞれの根拠を選択肢から選ぶ問題なのだが、これは一方向だけの学習、知識を覚えるだけの学習では到底、答えることができない問題です。


このように、大学受験が総合型選抜の増加、共通テストが知識を知っているだけでは解答できないような出題の増加によって、はっきりと変化してきていると、高校受験、中学受験もそれにあわせて変化していくのは、大学への進学を考えることになるため、当然のことなのです。


これを、塾が学校以上に対応ができるか、ということが問題なのです。

現時点では、学校の方が明らかに対応ができているのです。

そのことを考えたときに、現時点での学習塾の多くができることは、学習における補完が中心になると思いますし、今は、それでもいいのかもしれません。


しかし、そう遠くない未来、学校にはとても及ばない状況になり、子どもの数の大幅な減少で、学校や入試の変化についていけなければ、淘汰されてしまうと私は思うのです。