中学受験が親子関係を悪くする


中学受験と不登校(253)から(255)で、中学受験塾に通いながらも、勉強ができないことを言えない子ども達のことを書かせてもらいました。


中学受験塾に通う弊害であることは間違いないです。


気をつけていただきたいことは、「親が良いと思ったことは、子どもにも良いと思い込むこと」です。

ご相談いただいたケースで、ご夫婦ともに中学受験合格、私立中高一貫校に行っておられて、すごく良かったと思っていらっしゃったので、子どもにも勉強して、中学受験して、私立中高一貫校に行かせてあげたいと、中学受験大手進学塾に通うようにさせられたのです。


最初は、お子さんも頑張って楽しんで行っていたのですが、小4の途中から、学校からもなかなか帰ってこなくなり、塾にも行きたがらなくなり、塾の宿題はしない、塾に行ってもテストは平均点どころか、かなり悪い点数しかとってこなくなりました。

それでも、ご夫婦は、なんとか行かせようとされて、お父様とお子さんが激しく言い合うようになっていたのですが、小5になった5月のゴールデンウィーク明けに、あまりにもお子さんの態度が悪いので、お母様が激怒して、お子さんがやっていた任天堂スイッチを壊して捨ててしまわれたのです。

そのことで、お子さんはお母様と一切、口をきかず、学校に行くこともなくなり、不登校になったことで、お母様がご相談に来られたのです。


お母様がお話になった中で、一番、印象的だったのは、「あの子にも、あの私立中高の楽しさを味わわせてあげたいのです。何とか学校に行けるようになり、塾にも行けるように説得してもらえませんか?」というお話でした。


このお母様はどんな話をしても、何を言っても、このところから離れることはありませんでした。

私もお母様を説得するのではなく、お母様のお気持ちをお聞きして、できるだけ寄り添うようにしても、自分の良かったという思いと価値観を子どもに伝えたい、わかって欲しい、味わわせてあげたいが強すぎて、お子さんのお気持ちを考えたり、お子さんのお気持ちに寄り添うということがなかったのです。


考えてみてください。

お子さんの命がかかっているのに、勉強なんて考えますか?

子ども達は、追い詰められて、非行に走る子どももいます。

そうでなければ、簡単に命を絶とうとします。

これは冗談でもなんでもありません。

親子間でうまくいかないと、もう、子ども達には逃げ場はないのです。

そうなった時に、非行に走るか、命を絶つかくらいしか選択肢がありません。

ご家族にもわかってもらえないことを、赤の他人に話すことは、子ども達にはものすごく勇気のいることなのです。


ご自身にそういう体験がなくても、ご家族が塾に行かせたいと思うばかりに、お子さんに厳しくなればなるほど、お子さんは勉強をしたくない、勉強が嫌だということになっていきます。


お子さんの中学受験なんかよりも、中学受験塾に行くことなんかよりも、心身ともに元気でいることの方が大切ではないですか?

中学受験しなくても、お子さんが心身ともに笑顔で元気でいる方が、うれしくないですか?


最近、よく言われますが、お子さんの自己肯定感というものを犠牲にしてまで、中学受験塾に通わせ、中学受験する必要がありますか?

お子さんのためだと言いながら、実は、お父様、お母様の価値観を押し付けていないですか?


そのことによって、ご家庭が安心安全の場でなくなり、お子さんのご家族への信頼を失い、お子さんの自己肯定感を下げて、子どもの気持ちを犠牲にしてしまえば、家族関係は簡単に壊れてしまいます。

こうならないように、十分に注意をしてあげていただき、うまくいかない時は、方向転換をして、のびのびと過ごしていただき、笑顔を取り戻すことができれば、高校受験、大学受験で良い結果になることがあります。

それを信じて、決して親子関係を中学受験で壊してしまうことがないようにしていただきたいと思います。