いじめに耐え抜いた女の子〜その7〜


自分の感覚を信じていい。

そう言ってもらえてから、彼女はどんどん元気になりました。


同じフリースクールに通う子どもとも仲良くなり、教室では楽しく話もできるようになりました。

傍目に見ても元気になったなと思うくらいだったのですが、私はまだまだだなと思っていたのです。


というのも、フリースクールが彼女の家から少し遠いこともあって、毎日、お父様かどちらかのお兄さんが車で送ってきていたのです。


それを自分で電車・バスを乗り継いで来ることができるようになれば、本物だろうと思っていたのです。


なぜかというと、彼女がフリースクールに来るためには、彼女が最初に通っていた学校の子ども達が、同じ電車に乗るからなのです。


会いたくないという思いは十分に理解ができるのす。

ですから、電車・バスを使って通う必要はない、と思っていたのですが、事情が違ってきたのです。


彼女が中3の夏休み明けに、高校受験をしたいと言ってきたのです。

彼女は通ってみたい高校も決めていたので、その高校に通うには、フリースクールに来るのと同じルート、言い換えれば、彼女が猛烈ないじめにあった最初の私立中学・高校の子ども達と同じ路線の電車に乗る必要があるのです。


その電車に乗って通うなら、今から慣れないと、突然、その電車に乗って通うことは難しいことは、彼女もわかっていたので、年が明けて受験が近くなった時には、少しずつ電車でフリースクールに通う練習をするように伝えたのです。


彼女はまっすぐに私を見つめながら、その目は私にはっきりと訴えていました。


「どうしてそんなに冷たく言えるのですか?」と。


だから、はっきりと、言葉にして伝えました。


毎日通う以上、いじめていた本人達にも会うかもしれない。

それを覚悟の上で、その高校に行きたいなら、それを乗り越えるしか方法がない。

いつ、どこで鉢合わせをするかもわからない。

大阪でなくても、東京でばったり会うかもしれない。フランスに旅行したら同じホテルかもしれない。

そんなことがあっても、そこで逃げたらずっと辛い人生になる。


あなたは何も悪くない。

いじめた連中が100%悪い。

だけど、どこかでそれを乗り越えていかない限り、大手を振って外を歩けない。

だから、もっともっと元気になって、人として最低のことをした連中以上に、幸せな人生を送らないといけない。


そう伝えたのです。

辛いけれども、これが現実なのです。

いじられた側は何も悪くないのに、後々まで不安を抱え、恐怖と戦い、生きていかなければなりません。


高校に通うというなら、それを乗り越えていくしかないのです。


しかし、彼女はまだ、それを受け入れられなかったのです。

それは、それで仕方がないことでもありました。