ある子どもの中学受験と不登校 4
彼は、併願私立高校に受験に行けませんでした。
彼とは、彼が20歳の時に、フリースクールに訪ねてきてくれて初めて出会ったのですが、その時に、この併願私立高校の受験をしなかったと、少し誇らしげに、でも、どこか少し情けなさそうな感じで、複雑な表情でこの話をしてくれました。
併願私立高校受験をできなかったことによって、中学校は公立高校のランクを下げてはどうか、と彼に話をしたそうです。
中学校としては、もしも公立高校の受験で不合格になった時に、これまでの経緯もあるので、ランクを下げて受験することで、確実に進学できるようにして欲しいと考えたのだと思います。
ところが、彼はガンと拒否するのです。
これは中学受験の時にランクを下げ、甲陽学院中を受験して不合格になり、激しく後悔した経験が、彼にランクを下げるということを絶対に拒否させることになっていたと、彼は自分で話していました。
こうなると、公立トップ高校の合格を狙うことは、完全に一発勝負にかける、ということになります。
理解を示してくれていた中学校の担任、ご家族など、彼が信頼できる大人の言うことにも耳を傾けることなく、彼は、受験に突っ走っていきます。
結果は見事、合格!
この合格は喜ばしいものであった反面、彼の受験へのこだわりを助長してしまう成功体験になってしまったことは、否めません。
当然、彼は満足はしていなかったようですが、それでも、少しは自信を取り戻したと、後々、私に語ってくれました。
ところが、それも長続きはしないのです。
高校が始まって、すぐに学力基礎診断テストがあり、その結果は、彼は50位くらいと、これまでにない順位をとり、再び自信を失います。
しかも、同じ中学から合格した、中学時代の1位の女の子、2位の男の子に勝てなかったのはもちろんですが、同じ中学校から合格した他の生徒数人にも勝てず、成績が返却された日の夜、彼は、自室をまたもやボロボロになるまで破壊したのでした。
彼には、中学校の時に友達はいたのですが、同じ高校ではなかったために、高校では孤立してしまいます。
唯一、高校で話すようになった女の子だけが、彼のことを心配して、学校でも声をかけてくれていたようです。
それでも、ここから、彼は、また、勉強中心の生活に突入していくのです。
ところが、これまでと違い、彼の努力も、そう簡単には実りません。
公立高校と言えど、トップ校ですから、各中学校の各クラス1位のような生徒ばかりです。
そんな簡単には、自分の位置は上がってはいかないのです。
しかも自分は勉強しかしていない。
周りの同級生はクラブも、遊びも、恋愛もといろいろやっていて、勉強「も」しているのに自分は全く勝てない。
その思いが彼をさらに焦燥感で掻き立て、追い詰めていったのです・・・。
進学塾TMC池田 講師
フリースクール・パーソナルアカデミー カウンセラー・講師