日差しが強くなってくると、

 気持ちの良いところに行きたいなあ、

 空気の澄んだ、

爽やかな
広々としたところがいいなあ、 

北海道っていいなあ。
と思ったりします。






 「北の国から」で有名になった 

北海道の中心地、富良野地方。


 CMで目を惹きつけた
セブンスターの木、 

 最近ではApple社の広告の影響で 

青い池も人気ですし、


 ふらのワインのワイナリーや 

葡萄畑にぽつんと建つ 

カンパーナ六花亭など 

行ってみたいスポットには

 事欠かなくなりました。


 その中でも夏しか見られない、

 短い期間だからこそ 

 見逃したくない、と 

桜の時期のように
待ち遠しいのが、

 ファーム富田のラベンダー畑に

 それに沿う花々の色鮮やかな
カーペット。





 この美しい風景を作り上げるのには

 人知れず日々を重ねてきたはず。 


 ファーム富田の始まりは、

 明治36年のこと。


 新たな時代に自らの人生を

 切り拓こうとした人々や、

 あるいはこれまでの社会の崩壊で 

生き延びるための最後の選択として

 北の大地を選ばざるを  

 得なかった人々、


 北海道に多くの人々がやってきて、

 開拓が進み、

 中心地富良野に鍬を入れたのは、 

 富田徳馬。


 北海道中富良野が
ラベンダー栽培の適地、

として
栽培が始まったのは、

 昭和27 年のこと。


 富田の農場でも昭和33年に

 ラベンダー栽培をはじめました。 

 この時の最初の畑が、
今も斜面に広がる  

 トラディショナルラベンダー畑です。


 昭和45年には

 富良野で250戸もの農家が 

ラベンダー栽培に従事し、

 北海道全体に広がりつつありました。


 香料会社がどんどん買い付けて

 くれたからです。 

 農家はラベンダーを
作り続けていればよい、

 幸せな時代でもありました。


 しかし、世は移り変わります。

 わずか2年後。

 合成香料の質が上がり、

 貿易の自由化による
安い輸入香料がなだれ込み、
香料会社は 

ラベンダーの買入価格を下げます。


 さらに翌年、

買入をすべて
中止することになり、 

北海道のラベンダー畑は

 姿を消しました。 


 富田農場は、

 なんとか自分たちだけでも

 ラベンダー畑を維持できないか、と

 稲作で生計を立てながらも 

ラベンダーを作り続けます。 


 そして、ここでも
苦境を救ったのは、

 1枚の写真でした。


 3年後のこと、

 国鉄のカレンダーに、

 富田農場のラベンダー畑の写真が
採用されます。 


 ここはどこ?
いってみたい、と

 観光客が訪れ始めます。


 夏にお客さんが来てくれるように
なりました。

 しかしすでに
香料作物としては 

ラベンダーはやっていけない、

 という状況は変わりませんでした。 

  そんなある時、やってきた観光客から

 教えてもらったのです。 


 ラベンダーで

ポプリやサシェを
作ればいいのに。 


 ポプリとは、花や葉や木の実などを

 合わせて作る香料、 

サシェとは
ドライフラワーなどを使った

 匂い袋のこと。


 そういうものがあったのか、

 それを作れば、

せめて畑を
維持する費用だけでも 

賄えるかもしれない!


 富田農場が、 

生き残る道を見つけた時でした。 


 ポプリやサシェ作りに活路を
見出し

工夫をこらし、
玄関先で売り始めました。


 香料会社が買ってくれないのなら、

 自分たちで作り出せばいい。 


 独自に蒸留を始め、
免許を取り、  
オリジナル香水を作ることに
成功します。 


 北海道からラベンダー畑が消えて、

 10数年が経っていました。


 平成に入ってようやくこれでやっていける、


稲作をやめて
ラベンダーを始めとした

 ハーブや花の栽培に   

 専念することを決意します。


 南フランスのラベンダー生産者組織から  ラベンダー修道騎士を贈られ、 

ファーム富田のオイルが

 品評会で1位を取ります。


 農場の風景は

 夏の北海道の風物詩となり、 

美しい風景を見に来る人々が 

後を絶たず、 

 香り高いドライフラワー舎も作り、

 独自のフレグランスの
ラインナップも

増えていきます。 


 冬季のラベンダー開花にも
成功して、

 一年中国内外から

 人がやってくるようになりました。 


 ラベンダー畑で
ラベンダーソフト食べたいよね!

ポストもトラクターも、

 従業員の制服も
全部ラベンダー色にしよう。


 香水や石鹸を作るラボも
公開しよう。

 空港での売上も、

 オンラインショップも好調。


 ファーム富田は
ひとつひとつ、

事業を
広げていきます。  

 といっても、

「畑違い」には
手を出すことはしません。


 凍る大地を耕そうとした
約130年前、 

誰もが諦めたラベンダー畑を

 どうしても手放さなかった
50年前、 

それを引き継ぎ、ラベンダーを 

見事に花開かせた
ファーム富田。 


 北海道の大地を覆い、 

 生まれ育ったラベンダー、 


畑に咲いている時は 

その可憐な姿と香りで

 人々を魅了し、 

 そこでさらに香料として
生まれ変わります。


 見渡す限りの大地で

 ラベンダーの香りに包まれると、 

穏やかで落ち着いた自分に

 出会うことができます。 


 ファーム富田にありがとう。 

 実際に行くことが難しくても、 

一滴のラベンダーオイルは 

その場に連れて行って 

くれるのです。