高齢者や病気を得ている人、障害者。
そういった方々の活動を妨げて
いるのは、「肉体の制限」に過ぎない。

わたしたちの司令塔、
「脳」はこれからは
もっと柔軟に様々なものと
繋がり、制限を超えた活動が
できるようになるのではないだろうか…。

そのようなことを教えてくださるのは
東京大学大学院薬学系
研究科教授にして脳研究者の
池谷裕二先生。

脳の研究は現在かつてないスピードで
進んでいて、特に発展しているのが
「脳と外部の機械やコンピュータを
直接つなぐ」というもの。

すでに日本橋には外出できない
方々の職場となる、
分身ロボットカフェOriHIMEが
遠隔でサービスしてくれる店があり、
肩に乗せて日本橋ガイドも
してくれるのだが、
そういったものがどんどん進化して
いくようである。

脳と外部機器を直接繋ぎ、
意思をコンピュータやロボットに
伝えるその技術は
BMI〜Brain Machine Interface〜と
いうもの。

これを使えば事故や病気で
身体を動かせなくなっていても
考えていることを文字や音声に変えられ、
脳で直接車椅子や義肢をうごかすことが
できる。

また、逆に義肢で触れた時の感覚を
脳に送ることもできる。
すると、脳は義肢を本当の手足のように
動かせるようになってくる。

それだけではなく、
脳の活動を読み取って
絵画や音楽を作るという研究も
行われている。

さらに脳を読み取るだけではなく、
脳と脊髄を繋ぎ、
患者の歩行機能を回復した事例も
発表されている。
脊髄損傷によって歩行ができなくなっても、
遮断された神経回路を迂回して
脳から脚の筋肉に司令を
出して歩けるようになり、
やがて本来の神経回路も回復して
機械を使った信号がなくても
歩けるようになったのである。

回復、だけではなく
今ある能力の拡張も期待されている。

実験では
数名の被験者の片手に
ロボットの指をつけて数日間操作した結果、
ロボットの指も自らの指と
脳は認識するようになった。

つまり。
脳は新たに機械を身体につけられても
それを取り込む柔軟性を
持っていることが判明したのだ。

道具や楽器や車両を
自分の感覚の延長のように
使える達人たちの脳も、
そんなふうに認識しているのかも
しれない。

BMIの応用として
人の脳と脳を直接つなぐ研究も
されている。

脳波の情報を直接他人の脳に伝える
この実験は見事に成功し、
「テレパシー」が実証されたとも
いえる。

この先、脳と脳で直接
コミュニケーションが
取れたら、
新しい世界が構築されるかもしれない。

ここから考えられるものとして、
夢の追体験ができる、
触覚嗅覚味覚も伝えられるようになる、
新しいアプリのように、
脳に直接語学やスポーツ、
音楽の知見を取り込めるようになる、
といったようなものがある。

近い将来、
脳が様々な機械や装置を自由に
駆使できるようになり、
「肉体の限界」というものが
なくなったなら。

現時点で脳に障害がある、と
言われている方々が、
他にはない脳力を表現できるように
なったら。

「ひととはなにか」
「自分とはなにか」
これまで想像しえなかったような
新たな局面が展開していくのかも
しれない。

そしてそれは、
紆余曲折を経ながらも、
人々にとってよい方向に進んでいく、
そう信じていきたいのである。

(参考図書:世界一面白い脳の講義 
     日本神経科学学会編)