大航海時代、
スペイン人たちは、
未知の大陸に入り、
そこにいた人々を銃で脅し、
自分たちの土地とした。
宣教師の夢に天使が現れ、
新しい町を作れ、と告げた。
そこで彼らは、
メキシコシティから
100キロほどの場所に
碁盤目状に区画された
美しい「天使の街」を
作った。
街並みは赤に青に黄色に
カラフルに彩られ、
荘厳なカテドラルを始め、
多くの教会を建てた。
今、その街は「プエブラ」と呼ばれ、
その街並みや教会の姿から
世界遺産に登録されている。
プエブラは、スペイン人が
持ち込んだ、イスラム様式の
陶器、
タラベラ焼の街でもある。
タラベラ焼はもともとは
中東で生まれたものだが
スペインを経てメキシコに伝わり、
華やかさと上品さを
併せ持つ美しい陶器として
愛好者も多い。
また、グルメの街でもあり、
中でもメキシコ名物の
モレソース、という
チョコレートを用いた料理の
発祥の地でもある。
モレソースには
様々な香辛料がブレンドされて、
甘味辛味苦味旨味すべてを
味わえるという。
肉との相性は抜群とも。
裂けるチーズ、オアハカチーズも
ここの名産で
チーズがぎっしりつまった
バーガー、
セミータスも見逃せない。
唐辛子に肉や野菜を詰め込んで
クリームソースをかけた
チレス・エン・ノガタは
日本にない味付け、って
どんなモノか想像するのも楽しそう。
伝統的なメキシコスープの
ポソレに入っているのは、
白い大粒のコーン。
街並みは整備されていて
綺麗だが、
さすがメキシコ、
一本裏通りに入ると
カオスな雰囲気。
カオスといえば、
このプエブラを象徴する
いくつもの大聖堂。
当時のヨーロッパでは、
三角形に近いゴシック建築の
教会が主流、
さらに時代が進むと
華やかな装飾を施すようになる。
その装飾は、ルネサンス様式とは
異なったため、
バロック、歪んだ真珠、と
呼ばれるようになる。
イスラムとスペインの味わいが
混じり合ってメキシコに
伝わると、どうなるのか。
プエブラの教会は
外見も華やかなものもあるが、
扉を開けると仰天することが
多々あるという。
それは、
日本人写真家、小野一郎氏が
命名した
「ウルトラバロック」という、
この街の教会の装飾。
スペイン人がこの地を
去ったあと、
現地の人々は教会をさらに
飾り立てていく。
褐色の肌のマリア、

髑髏を抱えた聖人、
無数の先住民族の顔や
羽だけの天使、
およそ空間という空間を埋め尽くす
装飾に重なる装飾。
そして、全てが金色である教会も。
スペイン人に征服されてなお、
自らの文化をそこに刻んできた、
太古からそこに住む人々の
有り様が教会の装飾に
表されている。
超過剰装飾ともされるが、
この他に類を見ない
強烈な装飾は世界の建築好きを
熱狂させている。
シンプル?
モノトーン?
そんなもの、つまらない。
この地球上にある、
すべての色を愛して楽しんで、
これまでの歴史に積み重なった、
すべての飾りを慈しもうよ。
思い切り、すべてを味わおう。
時には、そんな時間を濃く過剰に
過ごしてみたら、
知らなかった自分が
きっと立ち現れてくる。






