地図帳の上の方に
大きな白い島が
あります。
世界最大の島、グリーンランド。

とはいえ、
オーストラリアの30 %くらいの
面積。

(オーストラリア以上なら大陸、
グリーンランド以下なら島です。) 




地図だとオーストラリアより
大きく見えます。

オーストラリアより
大きいのは
丸い地球を無理やり
平面に描く
メルカトル図法のせい。

極地に近いほど引き伸ばされ、
赤道に近いほど小さく見えます。

この図法、高緯度である
欧米を大きく見せ、
アジアやアフリカを
小さく見せる効果もあります。

実際より大きく見える国々が
小さく見える国々を
力で押さえつけてきたのです。

さて、グリーンランドは
デンマーク領です。

自治領として、政府が
おかれています。
人口50000人強。
公用語はデンマーク語と
グリーンランド語。

大部分が氷に覆われて
いるため、住めるところは
多くはありません。

流氷が目の前で見られる
カラフルでかわいい街。




氷河クルーズ、
氷河を観ながらハイキング。
氷河は蒼く輝き、
氷河同士がぶつかる音も
聞こえるし、

ホエールウォッチングに
オーロラ観光もできます。

犬ぞりも思う存分
楽しめます。

こんな暑い日々から逃げて
ひんやりしてるだろう、
グリーンランドに行ってみたいよ。

そんなただの寒くて広い
北の島、だけではありません。

住んでいる人々に目を向けて
みましょう。

5万人のうち、
イヌイットの人々が
9割にあたります。

彼らのことばは、
グリーンランド語。

しかし、デンマーク語を
理解できないと
テレビもわからず、
高等教育も受けられません。

1950年代まで
デンマーク政府は
彼らの伝統である刺青や
歌や踊りを禁止していました。

キリスト教を強制し、
イヌイットの子どもたちを
デンマークで教育して
グリーンランドに戻し、

「理想的」であるとしたのです。

イヌイットの人々は
今も自分たちをさげすみ、
アルコール依存に陥る人が
あとを絶たず、
自殺率も高いのです。

ことばを否定され、
文化を否定され、
未来に希望が持てない、と
彼らは言います。

ところが、
温暖化がこの島に
光を当てはじめています。

現在、グリーンランド 
周辺の氷河は1秒に1万トン 
溶けていると
研究者はいいます。

このままでは2150年には、
東京の水位は少なくとも77㌢、
何もしないと147㌢上昇すると
警告されています。

そして、氷の溶けた海では
漁業がやりやすくなり、
航路が開発され、
地下資源を掘り出すことが
できるようになるのです。 

いまロシアに依存している
ニッケルが、ここから取れれば、と
ベゾスやビル・ゲイツも
出資するファンドもあります。

中国が進出しようとしましたが、
アメリカに阻まれています。

何もない氷の島、
愚かな人々が細々と住む島、
デンマークのお荷物、

デンマークは自分たちを
そう見てきた、と
イヌイットの人々は語ります。

独立したい、と願う人々は 
グリーンランドの半数を
軽く超えますが、

「お前たちと手を組みたい相手なんて
この地球に存在しない。」
  
とデンマークは言い、
独立したって潰れるのがオチ、と  
長年軽視していたと。

そんな中、不動産王でもある
トランプ前大統領が

「グリーンランドを購入してもよい。
これは不動産取引だ。」

と発言した時の
デンマーク政府の慌てぶりが
実に痛快だった、と
人々は語ります。

もっともこの発言はデンマーク政府と 
中国政府双方に向けた
警告であると
見られていますが。

皮肉にも温暖化が
グリーンランドの
価値を高めてきています。

本来は温暖化など起こらず、
イヌイットの人々の
文化や伝統が尊重され、
彼らが尊厳を持って
生活していけたら、
良いのでしょうが。