そろそろざくろの季節。
といっても、日本では
あまり取れません。

元々はペルシャ(イラン)原産。
古代では「カルタゴの林檎」
と呼ばれました。

(カルタゴは、今のチュニジアに
あった国。ローマ帝国に滅ぼされました。
将軍ハンニバルが、象を山越えさせて
攻めいったなどの話で有名。)

スペインのグラナダ、という町は
ざくろという意味。

カクテルに使われている
綺麗な紅色のグレナデンシロップは
ざくろのもの。

「紅一点」の紅、はざくろ。
中国の詩人王安石が、
草原に一輪咲くざくろの花の
情景を詠ったことからきたもの…

固い皮の下から澄んだ
赤い実がたくさん出てくる
ざくろは、人々を
様々な想像に駆り立てたよう。

とりわけよく知られた話がふたつ。

ギリシャ神話。
女神デメテルの娘、ペルセポネは
冥界の王、ハデスにある日
連れ去られてしまいます。

ペルセポネの父ゼウスは、ハデスの花嫁に
することを了承していました。

しかし、母デメテルは悲しみ、怒ります。
彼女は農業の豊穣の女神。

デメテルが荒れると
穀物が取れなくなって
人々が飢えてしまいます。

ハデスはペルセポネを地上に
帰すことにしますが、
その時、ざくろを渡します。

冥界に来て以来何も食べていなかった
ペルセポネ、帰れるという安心感と
ざくろの美しさで、四粒ほど
食べてしまいます。

冥界のものを食べてしまった
ため、ざくろの四粒分、
年に4ヶ月は冥界で暮らさねば
ならなくなりました。

娘が冥界に行っている間、
デメテルは悲しんで仕事を
しないため、
地上には冬が来て四季が
生まれた…。



仏教においても。

鬼子母神は、500人もの子どもを
 持つ神でしたが、
自分の子どもたちを育てるため、
人間の子どもをさらっては
食べていました。

これを知った釈迦は、鬼子母神の
最愛の末っ子を隠してしまいます。

嘆き悲しむ鬼子母神に釈迦は

「お前は500人も子がいるのに
たった一人いなくなっただけで
こんなにも悲しんでいる。
たった数人しかいない子どもを
奪われた人間の親の気持ちが
わかっただろう」と

諭して子どもを返します。

「今後どうしても人の子が
食べたくなったら
これを食べよ」と

渡されたのが、ざくろ。

鬼子母神は改心し、
安産と育児の神となりました…




ざくろは人の肉の味がする、
といわれるゆえんです。

粒が多いことから
豊穣や子孫繁栄の
象徴とされてきました。

鬼子母神が持っているのは
吉祥果、といわれるもので
これがざくろだろうと
いう話。

ざくろには

高血圧の予防・改善、
むくみ解消が期待できるカリウム

抗酸化作用のアントシアニン

美白効果、糖尿病予防の
エラグ酸

抗酸化、抗菌のタンニン

など身体によいものが
たくさん含まれています。

一時期女性ホルモンのエストロゲンが
含まれていて
更年期障害の改善や
男性の抜け毛予防に
効くとされ、大ブームを
起こしましたが

国民生活センターの調査では
検出できませんでした。

ただ、大豆イソフラボンに似た
植物エストロゲンは微量に
含まれているようです。

(女性ホルモンも、エストロゲンと
プロゲステロンというふたつの
ものがあるので、
エストロゲンだけ摂っても
バランス悪そうですが…。)

ホルモンの効果は疑問ですが、
ポリフェノールも含まれていて
抗酸化作用もあり、
記憶力の向上も期待できるとも
いわれるざくろ。

古代ローマやインド、中国などで
薬ともされてきました。

日本には、平安時代に 
伝えられたとされています。

ざくろの外皮は、鏡研ぎにも
使われたとか。

江戸時代の銭湯では
洗い場から湯船への
出入り口があり、
(湯が冷めるのを防ぐため)
そこを柘榴口(ざくろぐち)と
呼びました。

身体をかがめて出入りする
ところから、
゛かがみいる(屈み入る)゛と
゛鏡要る゛を引っ掛けたようで。

秋の夜長に紅色の宝石を
つまみつつ、これは
若返りの妙薬か、
はたまた禁断の味の
木の実であるのか…

思うのも、おつなもの🧡