第六章の前に…

 

外伝〈訃報 1〉

 

彼と再会を果たし、穏やかな生活も一か月が過ぎた頃、

突如、彼のもとに「訃報」が飛び込んできた。

 

それは、彼の「両親の死」であった。

 

第2章(\学歴 経験不問の最強職は社●だった/ )に記した通り、

彼は北国の出身であり、両親は共に知的障害者であった。

 

前の晩は、久しぶりに彼と居酒屋へ行き、そのあとカラオケを朝まで楽しみ、

大いにはしゃぎ、始発の電車で彼の住まいに向かっていた。

 

早朝にもかかわらず、気温は30℃を裕に超えていたが、

彼の住まいまでの道のりは、楽しい時間にまだ含まれていた。

 

彼の部屋に着くと、ベランダの真下で近隣のおばぁちゃまが、

雑草の草刈りをしていた。彼の部屋は一階なのだ。

 

 

そんな中、薄いレースのカーテンで窓を覆い、

わたしたちは年甲斐もなく、肌を重ねあった。

 

外は通勤者や車の往来も近くに見て取れ、誰かに見られるのでは…?と、

思いながらする行為は、微妙に興奮をはらんだ。

声を気にして、自分の手で口を塞ぎ、隣りの部屋との厚いあ壁に手をかけながら、

体を固定し、二人で果てたあと、

お互い幸福感に包まれながら、深い眠りについていた。

 

 

 

陽も傾きかけた頃、

先に起きた彼が、誰かと電話で話してる様子で私も目が覚めた。

 

驚いて電話口で言葉に詰まっている彼。

彼の口から出てくる言葉は…

 

え?!二人とも?!

警察?!

 

この単語だけで、のっぴきならない状況であることはすぐに理解できた。

 

私も直ぐさま飛び起き、彼の近くに座りこみ、向こう側の電話の声に耳を澄ませた。

私たちが眠っているあいだ、かなりの着信があったようだ。

 

その対応にしばらく追われ、ようやく落ち着いた彼から、

詳しい話を聞くことができた。

 

「オヤジとおふくろが死んだ」と。

 

私もしばらく状況が呑み込めなかった。

 

発見のきっかけはご近所からの連絡だったそうだ。

「電気が点きっぱなしでおかしい」と。

彼の実家のはす向かいにある本家の叔父様が様子を見に行き、二人を発見したのだそうだ。

 

最初は玄関で仰向けで倒れているお義父さんを見つけ、何度も声をかけたが

反応がないことから、直ちに警察に通報。

 

警察の到着後、隣の居間のソファーで座ったままのお義母さんも、

発見されたのだそうだ。

 

叔父様いわく、お義母さんはソファーに前かがみに座っており、

見るからに顔色はドス黒かった…、と言って言葉を呑んだ。

 

 

いつもなら、涼しいはずの彼の実家の地域が、

この夏、日本で一番暑い気温を連日更新し、

そのせいで、遺体の腐敗もかなり進んでいたらしい。

 

その為、事件性がないかを確認するため、二人の遺体は”検死扱い”となり、

そのまま警察車両で搬送されたようだ。

 

 

 

・・そこから急遽、彼の故郷に帰る支度が始まった。

前の晩までの高揚感は一変にして吹き飛んだ。

彼の凍りつく表情…あの時、彼は一体、何を思っていたのだろう。

私にはとても聞く勇気は無かった。

 

私も約三年前に、音信不通にしていた父を最期に看取ったから。

あの時は、複雑な心境そのものだったのを思い出したからだ。

 

そして私は一緒に帰省/葬儀に参列することの辞退を申し出た。

何故ならば、私は・・

 

シンママの為「戸籍上」葬儀に参列する資格が無い

 

からだ。

 

私たちの関係性は、どこまでも、二人だけが勝手に決めた「内縁関係」に過ぎない。

 

東京で生まれ育った私には、計り知れない田舎の風習のようなものにそぐわない気がしたからだ。

けど、彼の切望もあって、私も急遽、帰省することになった。

 

こういう時、「戸籍」って、やはり重要だなぁ、と薄っすら考えてしまった。

 

 

現地では、本家の叔父様たちが葬儀や、検死の先生の手配やらと、

せわしく動いて下さっており、私たちがすべきことは、

一刻でも早く現地に入ることだけだった。

 

彼は深夜バスのチケットの手配や喪服の準備やらと、まだ本当の悲しみに浸ることもできず、目の前の作業を淡々とこなしていた。

 

深夜バスに乗るまでは、まだ冗談も言って、笑顔も見れていたが

それは徐々に薄れていくことになる。

 

22時出発の深夜バス。

乗り込むやいなや、お互い処方されている睡眠薬や安定剤を飲んだが、

効果はなかった。

時折り、彼の方を見たが眠っている様子はなく、ただ目を閉じているだけ、

といった感じだった。

 

 

・・彼のふるさとは遠い。

彼にはもっと遠く感じていたはずだ。

 

固く閉ざされたカーテンから、薄明かりがこぼれだし、

刻々と近づいてくる、彼の両親の待つ場所へと。

 

彼との会話も少なくなり、お互い視線は景色へと移っていく。

 

私には「初めて」の場所。

彼には「懐かしい」場所。

 

 

彼は若干15歳の若さでふるさとを捨て単身東京に、

貧しさからの脱却を胸に飛び出した。

 

そしていま…

 

カーテンを開けると、空は眩しいほど青かった。

バスの窓越しからも、外の気温の暑さは伝わって来た。

 

この暑さが、彼の両親の命を奪ったのだろうか…

まだ、何も詳しいことはわからないまま、ただ目的地にバスが到着するのを待つことしかできない、わたしたち。

 

”先読み”と、その処理能力に長けている彼の態度は、

次第にイラつきを隠せなくなっていった。

 

バスの中では、二人ともほぼ眠れぬまま、朝7時半には到着した。

 

「忘れたい、という願望が最も記憶に強く働きかける」

 

 

画像は、実際に、ご両親2人が仲良く並んだ棺桶です。

ご冥福をお祈ります。

 

 

つづく…

■■わりと大切なお知らせ■■

 

虐待/貧困/父不倫/中卒/早婚/性病/離婚/倒産/癌宣告/精神疾患/起業/愛人生活…

などなどなど・・・(過去記事一覧よりご覧頂ける通り)

 

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