<咲雷>
剛力さんが居なくてよかったですね!!!!!
それでは
<翠>
は?
廊下を歩きながら殺害現場の寝室へと向かう2人
<咲雷>
警部・・・大丈夫ですか?
<炎藤>
ああ すまない
ついカッとなってしまった
奴は逆撫での申し子だ
<咲雷>
でも確かに警部が言ってた通り彼女が寝室の鍵さえ持っていれば一気に出口が見えてくるのになー
誰も居ない夜の屋敷を自由に動き回り合鍵で部屋に侵入し寝ている主人の首を絞め鍵を閉めた
ただそれだけの話になりますから
<炎藤>
いや、この事件はそんな単純なものじゃない
さっきは売り言葉に買い言葉でああ言っただけで、実際に翠が鍵を持っていたとしても直結して犯人と断定するのは短絡的すぎる
むしろ翠が鍵を失くしたという事実が真犯人にとっては計算外で不都合な出来事だったはずだ
<咲雷>
翠さんに罪をなすり付けるつもりだった真犯人からすれば彼女が寝室に入れない状態に陥っているのは困るということですか?
<炎藤>
そうだ 死亡時刻が夜中となれば必然的に夜勤のメイドが疑われる
そのメイドが殺害現場に入れなかったとなれば警察は捜査の網をどんどん広げる
<咲雷>
ではシンプルに翠さんが犯人で何らかのトリックを用いた可能性はどうでしょうか?
<炎藤>
まあそれもあるにはあるが、さっきのあの態度を見る限り奴は犯人ではなさそうだ
言動は終始棘棘しく攻撃的だったが瞳は翠自身の心模様を映していた
再び大切な人を失った喪失感
我々の捜査に対して期待してない絶望感
そんな悲しい瞳をしていた
もちろん先入観や決め付けはよくないから翠も容疑者としてマークはするが俺の刑事の勘は奴は犯人じゃないと云っている
<咲雷>
そうですか・・・僕はけっこう怪しいかなって思っちゃいました
<炎藤>
ほう
<咲雷>
警部が桃瀬さんに「その特別な感情というのは恋愛感情ですか?」と訊いた時に桃瀬さんは否定しながらも対象を翠妖香から翠妖子に移し変えていた
てことはやはり毒島は翠妖香に恋愛感情を抱いていて2人の間には肉体関係などもあった
妖香さんが受け入れていたのか、なかば強引だったのかはわからないが、どちらにせよその事実を知った妖子さんはそれが許せなかった
<炎藤>
それが動機だと?
<咲雷>
はい 桃瀬玉子や甘草凛が自分の意志で毒島に仕えているとは別に翠妖子は生まれながらにして彼のメイドになることが決まっていました
だが僕には彼女みたいなタイプの女性が強欲で傲慢な毒島を心から慕っていたとは思えない
それがさらに大切な母親に手を出した上で亡くなるきっかけを作ったとなれば十分殺意は募るのではないでしょうか
寝室に到着
<炎藤>
ついに四重密室のお目見えだ
<咲雷>
まあメイド達からすれば4ー4でゼロになりますが
<炎藤>
これは・・・生体系のセキュリティーも絡んでいるのか
<咲雷>
はい 1つ目の扉は番号鍵ですが2つ目と3つ目を開けるのは指紋認証と顔認証です
<炎藤>
そして4つ目を開ける鍵を翠が失くしていたんだな
<咲雷>
そうです それでも翠さんは普通に1~3の扉を通過出来るため寝室のドアをノックして毒島を起こそうとしたんです
<炎藤>
毒島がここで眠りに就いた時、翠以外の人物は屋敷に居なかったんだよな?
<咲雷>
ええ そして屋敷内の全ての扉と窓に内側から鍵がかけられた状態でした
翠さんから通報を受けて到着した我々がすぐさま屋敷内を隈無く確認しましたが全ての扉および窓に異常な点はありませんでした
<炎藤>
寝室の本鍵はどこにあった?
<咲雷>
煙草を吸うように遺体が咥えていました
<炎藤>
ん?もしや・・・翠が毒島を殺し鍵を閉めて本鍵を所持したまま朝まで待ち桃瀬に連絡
到着した桃瀬が寝室を解錠し死体を発見する流れに乗じて翠自身も毒島に近付き口の中に本鍵を放り込んだ可能性は?
<咲雷>
桃瀬さんの証言によれば毒島に声をかけた際に寝室に入っていたのは自分だけだそうです
翠さんはその場から動かず心配そうに眺めていたと
そして桃瀬さんが悲鳴を上げると同時に翠さんも中に入ってきますが、その時点では既に桃瀬さんが咥えられていた本鍵を目視しています
<炎藤>
なるほど・・・
<咲雷>
さらには昨夜翠さんがベッドメイキングを終えた際に丁度毒島が寝室に入ってきて、その時に手に持っていた寝室の本鍵を金庫の上に置いていたと証言しています
<炎藤>
本鍵は毒島と共にずっとここにあったわけか、、、
<咲雷>
この寝室は毒島の命と命の次に大事な金や宝石類を預かる部屋だったため屋敷の中でも最も強固に造られていて
全方位が頑丈な鉄壁に囲まれ防火および防音性能もバッチリ
窓が無く唯一の出入り口である扉も分厚い鉄製です
普段から被害者とメイド以外が出入りすることは皆無に等しく使用目的としても睡眠部屋のため余計な物は一切なく中にあるのは金庫と宝石ケースとベッドだけです
<炎藤>
完全防備された無機質な部屋の中での密室殺人か...
<咲雷>
犯人目線からすれば、ここに辿り着く以前にも色々と越えなきゃいけない壁があります
<炎藤>
翠だ
<咲雷>
え?
<炎藤>
敷地内に入り、屋敷に侵入し、2階エリアに到達し寝室に突撃する
まあこれらは用意周到に万全な計画を以て実行し攻略できたとして
だが夜勤の翠だけは話が別だ
どう行動するか解らないし、鉢合わせる危険性も十分にある
<咲雷>
その危険性は全くありませんでした
<炎藤>
・・・眠っていたのか?
<咲雷>
いえ 翠は昨夜一通りの雑務を終えると仕事部屋にこもって夜通し作業に没頭していたそうです
<炎藤>
具体的な時間は?
<咲雷>
0時頃から朝食の仕度に取り掛かる朝方までだそうです
<炎藤>
仕事の作業に関与してない桃瀬や甘草が夜勤の時、彼女達は夜中に何をしている?
<咲雷>
基本的には自由時間で本を読んだり動画を観たりしてさっきの部屋で過ごすそうですが、仮眠をとることはまず無いと言っていました
これは仕事が残ってない時の翠も同様です
<炎藤>
犯人がその事実を把握していればそこまで気に病むことでもないということか
寝室に勢いよく捜査員が入ってくる
<捜査員>
警部殿!!書斎を調べていたら本棚が回転する様に造られていて裏側からこんな物が見つかりました!!
<炎藤>
こ、これは・・・!
<咲雷>
遺言状ですね・・・
<炎藤>
物凄く分厚いな
<捜査員>
長々と自分自身の栄光や名誉について書き連ねられているようです
さらには葬儀についての細かい要望や参列者の名簿など
そして最後に遺産に関しての遺言が記されていました
我が毒島富豪の絶大なる全財産は、
翠妖子と甘草凛の二人で折半せよ。
<炎藤>
何だと!?
<咲雷>
翠さんは理解るけど、何故たかがメイドの甘草さんに!?
<炎藤>
・・・毒島の自惚れに塗れたこれだけの文量を一人で読むのはストレス極まりない
だがとても貴重な情報であることは間違いない
捜査員達で手分けして何が何でも全てに目を通せ
そして少しでも気になる点があったらすぐに報告してくれ
<捜査員>
了解です!!
<咲雷>
急いで甘草さんの居る病院に向かいましょう!!
<炎藤>
いや待て
口を開く保証の無い甘草本人への聴取は無駄足になる可能性がある
今はとりあえず事情を知っている者なら誰でもいい
いや誰でもはよくないな・・・
接しやすい方のもとに向かうぞ
再び桃瀬のもとへとやって来た2人
<桃瀬>
あら お二人とも息を切らしてどうされたんです?
<炎藤>
随分と探しましたよ・・・
<桃瀬>
さっき言ったじゃないですか
今日中に色々とやらなければいけないことがあるから屋敷内をうろちょろしますって
<咲雷>
書斎から遺言状が見つかったんです!!
<桃瀬>
そうですか...
<咲雷>
財産は翠さんと甘草さんで折半しろと書かれていました
甘草さんはあなたと同じように普通のメイドではないんですか?
<桃瀬>
・・・トミタケ様は女性関係に奔放な方で数え切れない程の愛人が居ました
凛はその内の1人です
<炎藤>
何!?
<咲雷>
メイドとまで肉体関係を持っちゃったんですね、、、
<桃瀬>
いや違います 凛がメイドになりたいと申し出たんです
<咲雷>
え?
<桃瀬>
彼女は元々キャバ嬢で店のNo.1でした
そこに客として来ていたトミタケ様と出逢い関係が始まりました
最初は割り切った愛人関係だったらしいのですが次第に凛がトミタケ様を本当に好きになっちゃったんです
凛は独占欲が強くて嫉妬深い性格です
トミタケ様を一人占めにしたいと思ったけどそれは不可能な話だった
ならばせめて数多いる愛人の中で自分だけ特別な存在になりたかった
「大好きな人の身の回りのお世話をしたい」と言って彼女はキャバクラを辞めたんです
<炎藤>
だから毒島が死んだと聞いて号泣したのか...
<桃瀬>
まあ泣くでしょうね 毎日近くで見ていた私からすれば凛がどれだけトミタケ様を愛していたか知っています
<炎藤>
愛人の中で彼女だけは毒島と精神的な関係も築いていた
懇意の者には見返りを与える奴の性格からすれば遺産を相続させるところまで話が飛んでもおかしくはないか、、、
<咲雷>
もしですよ
もし毒島氏が「俺が死んだ時は遺産をお前に半分やる」なんて話を甘草さんにしてたとしたら、甘草さんにとって彼はただの好きな人の範疇を優に越えてくる
<桃瀬>
凛を疑ってるんですか?
<咲雷>
いえまあ一応・・・
今のところ、あなたには特に動機が無くアリバイもあります
翠さんもまあ個人的に色々と思うことはありますが、わざわざ自分が夜勤の日に犯行を行うでしょうか?
その点、甘草さんは・・・
<桃瀬>
妖子は遺言状の在り処をトミタケ様に聞かされていたと言っていました
ですが凛からはそんな話を聞いたことがありません
しかも内容までとなると妖子でさえ知らなかったはずです
<炎藤>
何かの拍子に知った可能性は十分あります
<桃瀬>
刑事さん達、何か勘違いしていません?
骨折していなければ昨日の夜中ここに居るのは凛の予定だったんですよ
<炎藤・咲雷>
・・・!!
<桃瀬>
凛が来れなくなって妖子が急遽夜勤になったんです
<炎藤>
これは・・・とんでもないことを見落としていたな・・・
第5話に続く