<咲雷>
あの足は桃瀬さんだ!!
<炎藤>
おいおい...マジかよ
急いでベッドに向かい毛布を勢いよくはがす炎藤
<桃瀬>
スースースー...
ムニャムニャ(_ _)..zzZZ
<咲雷>
はは・・・これはただ寝ているだけですね
<炎藤>
ったくビビらせやがって
2人の話し声に気が付き目を覚ます桃瀬
寝ぼけ眼で目をこすりながら咲雷の方を視る
<桃瀬>
...刑事さん
<咲雷>
あーすいません 起こしてしまいましたね
こちら僕の上司の炎藤警部です
<炎藤>
こんにちは この度は主人を亡くされて心中お察しします
1日でも早く犯人を捕まえられるよう尽力致しますので
<桃瀬>
・・・よろしくお願いします
<炎藤>
ところで翠さんはどちらに?
<桃瀬>
私が仮眠に入るまでは一緒に居たのですが・・・
仕事部屋で経理の作業でもしてるのかしら
<炎藤>
メイドが金勘定までするんですか?
<桃瀬>
私と凛は家事や身の回りの世話だけですが妖子はトミタケ様のスケジュール調整、会社経営に関する情報管理や運営整理まで秘書的な役割も兼ね備えているんです
<炎藤>
そうなんですね では自分たちはもう行きますんで再び休んでて構いませんよ
朝から色々あってお疲れでしょう
<桃瀬>
いやもう軽く仮眠れたので起きます
明日からは私達メイドも立ち入り禁止になるんですよね
今日中にやらなければいけないことがあるので
<炎藤>
そうですか ではひとつだけ訊いても宜しいですか?
<桃瀬>
何でしょう?
<炎藤>
あなたは被害者のことをどう思っていましたか?
<桃瀬>
大変感謝しておりました
トミタケ様は何者でもなかった私に価値を与えてくれた方です
<咲雷>
価値を与えた?
<桃瀬>
昔の私は人見知りを極めたコミュ障で友達もおらず何ひとつ取り柄が無い学生でした
そんな中で迎えた就活では内定はおろか一次面接の時点で落とされ続けました
「ああやはり勉強が出来ても学歴があっても私自身が欠陥品の出来損ないだから誰にも必要とされないんだ・・・」と心底絶望し自己嫌悪にまみれた私は踏み切りに飛び込んで命を絶とうとしたんです
<炎藤>
・・・
<桃瀬>
ただそこで間一髪で救い出してくれた人がいたんです
警報音そして既に遮断機は下りていて一歩間違えばその人も巻き込まれていたでしょう
それが妖香さんでした
<炎藤>
妖香さん?
<桃瀬>
妖子のお母さんです
<炎藤・咲雷>
・・・!!
<桃瀬>
私が泣き崩れながら「なんで死なせてくれないのよ!!!!!」とヒスになって喚き散らすと妖香さんは暖かい陽だまりのような優しさで包んでくれました
そしてこう云ったんです
あなたの本当の声が聞こえたの
"死にたい"って云う言葉によーく耳を澄ませるとね奥底にある"生きたい"って云う気持ちが伝わってくるわ
"死にたい"って言葉と"生きたい"って言葉は結局同じ意味なのよ
<炎藤>
なるほど、、、
<桃瀬>
事の顛末を聞いた妖香さんはトミタケ様に私を紹介してくれたんです
メイドの仕事は真面目さと丁寧さを持ち合わせていれば人と関わることが苦手な私でも聢とこなすことができました
トミタケ様も次第に私のことを気に入って下さり、
妖香がどうしてもと言うから試しに雇ってみたが、ポンコツだったらすぐに切り捨てるつもりでいた
だがお前の仕事ぶりは期待以上だった
細かいことに気配りが利くし節々に慇懃さが垣間見えて信頼できる
私に仕える価値がある立派な一流のメイドだな
とお褒めの言葉を頂き、最初は最低限だった給料も現在は一流企業に勤めるよりもはるかに高い額を頂けるようになりました
<咲雷>
それが価値を与えてもらったということですか
<桃瀬>
ええ 死ぬ事と死に方だけを考え無気力な毎日を過ごしていた私が現在こうして自信を持って日々を生きれているのは紛れもなくトミタケ様そして妖香さんのおかげですから
<炎藤>
その妖香さんはもうメイドを辞められたんですね?
<桃瀬>
・・・
<咲雷>
??
<桃瀬>
妖子のお母さんはもう亡くなっています...
<炎藤>
何!?
<桃瀬>
・・・数年前この屋敷に強盗が入ったことがありました
その時に刺されそうになったトミタケ様を庇った妖香さんは重傷を負い1ヶ月後に亡くなりました、、、
<炎藤>
そんなことが・・・
<咲雷>
毒島氏は多方面で評判が悪く傲岸不遜な性格だったと聞きました
メイドが命を張ってまで護る意味はあったのでしょうか?
<桃瀬>
確かにトミタケ様は常に自分が一番で周りの誰かを見下しては高飛車な発言や理不尽な暴言で貶し散らしトラブルが絶えませんでした
抱えていた裁判も数え切れません
<炎藤>
思っていたよりヤバい奴だな
<桃瀬>
ですが私達メイドに対しては然るべくした愛情を注いでくれていました
私も認められるまでの期間はあたりの強さを感じていましたが、気に入って頂いて以降は明らかに私に対しての態度が丸くなりました
<咲雷>
自らが懇意にしている者には優しかった、、、
<桃瀬>
そして中でも翠家には代々毒島家に仕えてきたという歴史がありトミタケ様も特別な感情を抱いておられました
自分の意見を抑えてまで私を受け入れてくれたのも妖香さんの口添えだったからです
<炎藤>
その特別な感情というのは恋愛感情ですか?
<桃瀬>
そうではありません 私や凛のことも大変可愛がって頂きましたが、中でも特に妖子のことは大切に思われていた という意味です
<炎藤>
色々と話して頂きありがとうございました
<咲雷>
翠さんのところに行きますか?
<炎藤>
そうだな 挨拶して軽く話だけ訊くか
<桃瀬>
やめた方がいいですよ...
さっき咲雷刑事が話を聞いたばっかりなのに、また警察の人が自分のところに来たら確実に嫌がりますから
<炎藤>
え?
<咲雷>
さきほど桃瀬さんが言っていた強盗事件の犯人を未だに捕まえられていない警察のことを翠さんは強く憎んでいるらしく僕が聴取した時も態度からそれは感じられて
最低限のことは話してあげるから そしたらさっさとあっち行って
と云わんばかりの表情でした
<炎藤>
最低限のことを教えた今、俺が行ってもより煙たがられるだけか・・・
<翠>
私から来た場合でも煙たがるけどね
<炎藤>
!?
<翠>
邪魔よ 出ていってくれる?
<炎藤>
これはこれは
あなたが翠妖子さんですか
わたくし警部の炎藤と申します
この度は
<翠>
聞こえなかったの?
<炎藤>
ええ 今すぐに立ち去ります
ただ桃瀬さんにも伺ったので、あなたにもひとつだけ訊かせて頂きたい
<翠>
はいはい
<炎藤>
あなたが被害者のことをどう思わ
<翠>
最低限以下の質問ね
わざわざ答える義務は無いわ
<炎藤>
捜査をする上での参考になります
情報は出来るだけ多いに越したことはない
<翠>
情報が多かろうが少なかろうが結果は変わらない
あんたらに何を教えたって無意味よ
スターミーの隠れ特性ぐらい意味が無い
どうせまた殺人犯を野放しにする
<炎藤>
・・・まるで私達警察があなたの母親を殺したかのような毛嫌い振りだ
ここまで目の敵にされては捜査に支障が出る
もう行くぞ咲雷
<咲雷>
はい...
<翠>
偉そうに権限だの権力だの振り翳して
ちょこまかちょこまか動き回って
「結局何もわかりませんでした」って迷宮入り
まあせいぜい頑張って
<桃瀬>
妖子 もうやめなさい、、、
物凄い形相で炎藤が翠に詰め寄る
<翠>
何よ?
<炎藤>
よかったですね
<翠>
何が?
<炎藤>
偶然にも鍵を失くしていたことですよ
でなければあなたが最重要容疑者だ
<翠>
それはこっちのセリフよ
私が鍵を持ってたら殺ってないのに逮捕されてた
真犯人を捕まえられない上に冤罪まで生んだら最悪でしょう?
私が鍵を失くしていてよかったですね
<炎藤>
この野郎...
<咲雷>
警部、落ち着いて下さい!!
オーバーヒートしています
とりあえず今はこの部屋から出ましょう
怒りに燃え盛る炎藤を何とか部屋から押し出した咲雷は翠の前に
<咲雷>
よかったですね
<翠>
何が?
<咲雷>
剛力さんが居なくてよかったですね!!!!!
それでは
<翠>
は?
第4話に続く