「もう、肺の半分はね、」
少し痛々しく、彼は胸を抑えながら。
それでも、大丈夫って微笑みました。
僕は少し驚いて、悲しくなったけれど。
「ああ、だから貴方はそんなに、、、」
くぐもってしまう声を、なんとかまっすぐにしたかった。
でも僕はいつになくとても正直で、いろんな言葉を浮かべた。
廂に隠れた目には、何が映ってたのだろう。
あの一瞬でも触れた手の温度を必死に思い出そうとした。
都合良く美化しつづける記憶に、反旗を翻せない。
それでも、今はすこしだけ許してほしい。
また、あたたかな手を僕に差し伸べてくれれば、いいのにって。
「さよならにはまだ早すぎるからね。」
僕は、貴方の知らない人だけど。
でも、僕は貴方を知っている。だから、声をかけた。
一言葉づつ貴方達に記してもらった、ノートの切れ端。
大事に握りしめるのは、罪な事かな。
空は梅雨間の晴れを讃え、世界は明るくなろうとした。
僕らは涙をこらえて、前にすすもうとした。
希望を浮かべろ。言葉にするな。ただ、願うんだ。
いろんな欠片を、手の中に握りしめて、 ただ 祈る。
だれも、だれも失いません様に。
貴方も、あの人も、僕の大事な、大事な人達全部。