『――はぁ~、寒っ! 外、すごい雪でしたよ!』
使いから戻って部屋へ入ると、
龍馬さんは布団を頭からスッポリかぶって火鉢にあたっていた。
デッカイ座敷童みたいだ…。
『……おぉ、翔太、すまんかったのう。寒かったじゃろ』
そして掻き回していた火箸を置くと、
くるまっている布団をバサリと開いてオレに手招きをする。
『ほれ、翔太も入れ』
『…………っ』
一気に頬の熱が上がるも、
オレにそれを拒否する術(すべ)はなく…。
『…オレ、冷たいですよ?』
怖ず怖ずと傍に寄ると愉快そうに笑い、龍馬さんはバフリッと凍えたカラダを包み込んでくれた。
『はっはっ! だからこうしてあっためてやるんじゃき!』
『…ちょっ、龍馬さん…っ』
後ろから羽交い締めするみたいにギュウ…ッと抱きすくめられ、
逃げ場のない状況にあたふたするオレ…。
ホント、この人には参る…。
『…お、雪のニオイがすると思うたら、翔太の髪に六つ花が咲いちゅうぞ』
『六つ花…?』
花なんかには触れて来なかったけど…。
不思議に思って後ろを仰ぎ見ると、
ドキリとする程に優しい、穏やかな眼差しと目が合った。
無邪気な子供みたいな事をすると思ったら、
突然、こうやって大人な表情をしたりするんだよな、この人は…。
それって反則だろ。
『雪の欠片の事じゃ』
『雪のカケラ…ですか?』
『そうじゃ、雪をようく見ると、六つの花びらを咲かせた花に見えるき』
……あぁ、そうか、
“結晶”の事だ…。
『よう似合うとるが、こんままじゃと風邪を引くのう。それはちくといかん』
そう低く発すると、
龍馬さんは更にオレを引き寄せて、
吸い付くようにして首根へと顔を埋めた。
『……んっ、ちょ…、龍馬さん…っ』
はらりとかかるクセのある髪、
ふわりと香る、
“男”のニオイ…。
触れられた柔い感触に、なんとも呼べないゾワゾワ感が背中を這う。
雪のように柔らかい温かな唇と、
チロリと肌を擽る湿った舌先。
『……翔太』
『………ぁ、龍…っ』
雪のニオイを放つ六つ花を散らし、
オレ達は互いの温もりを求め、分け合い、
慈しむようにして肌を重ね合ったのだった……。