共働きだった我が家は、休みの日は基本的にあまりなかった。美容師の母親は土日は忙しい。なので、土日休みの親父が僕と弟の食事の世話をしてくれた。隣町のラーメン屋にいって男3人でランチ、決まって親父は半チャンラーメン、だから半チャンラーメンは大人の食べ物だと思っていた。たまに味噌バターも頼んでいたかもしれない、いや味噌バターにコーントッピングしてたのは自分かもしれない。記憶とはそんなものでして、3人で腹を満たしてその後、とんでもなく長い滑り台がある公園へと向かい夕方までひたすら遊んでいた。登っては滑り登っては滑り、滑っては登りを永遠と繰り返す子供達についてきてくれたか、遠くで見てたかは定かではない。そして、途中スーパーでカツオを買い、うちに帰ってキッチンに向かい新聞紙を敷いて、母親は使わない木のまな板(じいちゃんのお手製)を静かに置いて、これまた新聞紙で大事に包んである細長い刺身包丁をあたかも侍が鞘から刀を抜くかの如く鮮やかに取り出す。その背中はまるで田中泯のようだった。

カツオと向き合う、いや、対峙する親父はやはり侍に見えた。女子供は入ってくるな。その台所はサンクチュアリ〜聖域〜と言っても過言ではなかった。

そして、カツオを捌く。頭と尻尾を切り落とす以外は、音を立てずに静かに捌く、テレビを音がやけにリビングに響き渡る。テレビではカツオがサザエに叱られて、泣き喚いている。親父に裁かれるカツオと重なる。こっちのカツオは静かに裁かれるが、あっちのカツオは泣いている。

そんな事を思ってる間にカツオのおつくりがテーブルに並ぶ。

お父さん、お誕生日おめでとう!!