「僕には、忘れられない人がいる。」
8年前、僕はある映画に出逢った。
多分、あの出来事がなければ、見る事はなかっただろう。
当時、大学生だった僕は自転車で駅まで向かっていた。
まだバイクを知らない時であった。
いつものようにクローバー橋を渡り
猿江恩師公園を通り道にしていた時
ふとティアラ江東での撮影が目に入った。
キムタクらしき男性と、背の高い 日本人ではない女性。
時間は10時過ぎだったと思う。
1限目は9:15から。
間に合わせるには、7時半までの電車に乗らなければならなかった。
なので、ゆっくり見てる余裕はなかった。
それは後に分かった。竹之内豊とケリー・チャンだった。
映画の名は、「冷静と情熱のあいだ」
絵画の修復士を志す順正と、
裕福な実業家の恋人に生活の全てをゆだね、何不自由のない生活を送っているあおい。
学生時代に留学生だったあおいと順正は出会う。
二度と会うことはないであろう彼女の姿を未だ探しつづけていた。
彼の心の中には常に空虚な穴がぽっかりと空いていた。
10年前の他愛もない約束…
“あおいの30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモのクーポラで待ち合わせる。”
一縷のはかない望みだけに全てをかけて。
初めて3度見た映画。
何かが僕の心に響く。
何かが僕の中で重なる。
『過去をよみがえらせるのではなく、未来に期待するだけではなく、現在を響かせなければいけない』
『たとえこの先二度と会うことはなくても、俺は変わらずあおいを思い続ける』
そうなんだ。
フィレンツェのドゥオモのクーポラで待ち合わせる事は出来ないが
その前にやらなければ行けない事がある。
パスポートの期限が残ってるうちに。
6年前に言った約束を果たす事にした。
「僕には忘れられない人がいる」