いのちスケッチ | p・rhyth・m~映画を語る~

p・rhyth・m~映画を語る~

メインブログ【くた★むび】



監督:瀬木直貴
キャスト:佐藤寛太/藤本泉/芹澤興人
配給:ブロードメディア・スタジオ
公開:2019年11月
時間:100分




福岡県大牟田市にある大牟田市動物園は,1941年に九州で5番目の動物園として開園。しかし,地方都市の人口減の進む中,入園者数の低迷から一時は閉園も検討されるほどの危機に陥っていた。ところが近年,大きなリニューアルがないにもかかわらず入園者数を増加させ,関係者からは“日本の動物園の新たな姿を切り開いた”とも称されている。

市から運営を委託された民間企業は,動物の魅力を生かしたイベントや動物福祉を重視した飼育に取り組んだ。特に,動物に治療や投薬を行いやすい体勢を覚えさせる“ハズバンダリートレーニング”により,ライオン,トラ,マンドリル,サバンナモンキーの無麻酔採血を国内で初めて成功させ,世界からも注目されている。

そんな実在の小さな動物園を舞台にしたご当地ムービー『いのちスケッチ』を今夜は紹介。監督は『カラアゲ★USA』(2014年・太秦)『恋のしずく』(2018年・ブロードメディア・スタジオ)の瀬木直貴。

東京で漫画家を目指していたが,仲間のデビューやバイト先の夜逃げにショックを受け,夢を諦めて故郷・福岡に帰ってきた田中亮太(佐藤寛太)。実家を頼れず,友人の部屋に居候していると,地元の延命動物園でのアルバイトを紹介される。いつも園内を駆けずり回っている多忙な園長・野田(武田鉄矢)をはじめ,飼育員たちの情熱と仕事ぶりに面食らうことばかりの亮太。

しかし,いちばん驚いたのは,認知症の祖母・和子(渡辺美佐子)のかつての家に住んでいるのが,獣医師の石井彩(藤本泉)だということだった。彩やスタッフたちから,この動物園が“動物福祉”に力を入れる,世界でも珍しい動物園であることを教えられた亮太は,その取り組みを理解し,自分のやるべきことを模索し,成長していくのだったが…。

人や動物とのふれあい,老いと命を通して,成長する若者の姿が,風光明媚を捉えたパワフルな背景とともに,見る物の心に温かい余韻を残していく1本。感染症予防のため,人の健康を守るには動物や環境にも気を配る必要があるという“OneHealth”という考え方にも触れられている。


映画クタ評:★★★★