グリーンブック | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Green Book
監督:ピーター・ファレリー
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ/リンダ・カーデリーニ
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ/ギャガ
公開:2019年3月
時間:130分




今夜は,昨年のオスカー3冠に輝いた作品を紹介。人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に,黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続ける中で友情を深めていく姿が,実話をもとに描かれた1本だ。

タイトルの『グリーンブック』は,1930年代から1960年代に,人種差別の激しかった南部へと車で旅をする黒人のために作られた施設利用ガイドブック『黒人ドライバーのためのグリーン・ブック(The Negro Motorist Green Book)』の通称。『メリーに首ったけ』(1999年・20Cフォックス)や『愛しのローズマリー』(2002年・20Cフォックス)などで,弟のボビー・ファレリーと共にメガホンをとったピーター・ファレリーの単独監督デビュー作となる。

1962年のアメリカ。ニューヨークの一流ナイトクラブ“コパカバーナ”で用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は,ガサツで無教養だが家族思いのイタリア系。店の改修で仕事がなくなり,バイトを探していた彼のもとに運転手の仕事が舞い込む。雇い主は“神の域の技巧”を持ち、ホワイトハウスでケネディ大統領の前で演奏したこともある天才黒人ピアニストのドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)。カーネギーホールに住む彼は,黒人差別が色濃く残る南部での演奏ツアーを計画していて,腕っぷしの強い運転手兼ボディガードを探していたのだった。

クリスマス・イブまでに自宅に帰るという約束で仕事を受けることにしたトニー。ツアーへと出発する際に,ドンのレコードレーベルの担当者から,アフリカ系アメリカ人の旅行者がモーテル,レストラン,給油所を見つけるためのガイドとなる『グリーンブック』を手渡される。こうして,どんな厄介事が待ち受けているかも分からない南部へ向けて旅立つドンとトニーだったが…。

ドン・シャーリーとトニー・リップへのインタビューや,物語中にも登場するトニーの妻宛ての手紙に基づいて,監督のピーター・ファレリーや,トニーの息子であるニック・ヴァレロンガによって製作されたこの作品。生い立ちも性格も正反対で,お互いへの嫌悪感を隠そうともしなかった白人と黒人が,徐々に理解を深め,自分にはない相手の長所を尊重して認め合う。そんなプロセスをシンプルで素直に,そして丁寧に紡ぎ出す2時間。

人種差別をテーマにした作品なので,当然,心を痛めるシーンもあるが,全体としてマイルドで,見終えた時に,すごく心潤わされる。しかし“お涙頂戴”的な“いかにも”感はなく,真っ直ぐにぶつかって,ちょっぴり可笑しくて…をミックスした,たまらなく人間臭くて美味しい後味へと導いてくれるのが嬉しくなるのだ。


映画クタ評:★★★★


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