クローバーフィールド・パラドックス | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:The Cloverfield Paradox
監督:ジュリアス・オナー
キャスト:ググ・バサ=ロー/デヴィッド・オイェロウォ/ダニエル・ブリュール
配給:Netflix
公開:劇場未公開(配信:2018年2月)
時間:102分




“国内上映作品を,国内上映時のポスターと共に”というマイ・ルールで紹介しているこの【くた★むび】で『カンフー・パンダ3』に次いで2度目の“掟破り”となる劇場未公開作品を今夜は紹介。それも『カンフー・パンダ3』は“日本未公開”というだけで,他の国では劇場公開されたのだが,今夜の『クローバーフィールド・パラドックス』は世界的に劇場公開が見送られ,映像配信サイトNetflixでの独占公開となった。

配信サイトのみで公開される作品を“ドラマ”とするのか“映画”と認めるのか? については,昨年から今年にかけて各映画賞の度に議論され,いまだ明確な“線引き”がされていない。これも時代の変遷だろうが,今後“配信のみ”の映画ばかりになるとしたら,やはりそれは哀しいことだと思う。

近未来,人類は深刻なエネルギー不足に直面していた。5年以内に枯渇するという危機を救えるのは“シェパード粒子加速器”のみ。国際宇宙ステーションでのその加速器の実験が成功すれば,永久のエネルギーを生み出すことができる。クルーに誘われ,躊躇していたエヴァ・ハミルトン(ググ・バサ=ロー)にステーション行きを勧めたのは,夫で医師のマイケル(ロジャー・デイヴィス)だった。

それから2年,宇宙ステーション“クローバーフィールド”では何度も“シェパード粒子加速器”の起動実験が試みられるが成功せず,残された実験は3回。ちょうど地球のテレビ番組で,学者のマーク・スタンブラー(ドナル・ローグ)がこの実験に「加速器は従来の1000倍強力で,実験するたびに時空の膜を引き裂き,複数の次元を衝突させて現実を粉砕させる恐れがある。この実験は混沌を解き放つ可能性があるのだ。それは過去や未来へと多次元に影響する」と批判する。それでもクルーたちは望みをかけて残された起動実験を始めるのだったが…。

“クローバーフィールド・ユニバース”として作品世界をシェアするアンソロジー・シリーズの第3弾として製作されたこの『パラドックス』。『HAKAISHA』では国防総省が保管する事件目撃記録の暗号名に,そして『10 クローバーフィールド・レーン』ではミシェルが監禁されたハワードの家の住所になっていた“クローバーフィールド”は,この作品では国際宇宙ステーションの名となっている。スタンブラー博士のコメントはまさに,ストーリーの核となっているばかりか,実はシリーズ3作品の「なぜ?」への回答となっている。

つまり,“シェパード粒子加速器”によって時空が歪み発生した“パラドックス(矛盾)”によって「過去や未来へと多次元に影響する」結果が,この作品での宇宙船内と地球に起こる不可解な恐怖だけでなく,『HAKAISHA』の怪獣や『10 クローバーフィールド・レーン』の宇宙人を生み出したと明かすのだ。

しかし,シリーズのファンが求めていたのはソコじゃないのでは? 前2作でのスリリングで予測不能な展開と,有無を言わせないラスオチこそが,このシリーズの魅力であったと思うのだ。その点で見ると,嫌いではないのだが,ややモノ足りなさを感じる。

『10 クローバーフィールド・レーン』の3倍となる制作費4500万ドルを回収不能と判断して,Netflixに5000万ドルで売りつけたパラマウント。しかし,プロデューサーのJ・J・エイブラムスの周囲からは,更なる続編の噂も聞こえるという。配信サイトの位置づけを含め,今後の映画界の流れとして注視してみたい。


映画クタ評:★★★★




◆シリーズ一覧◆

クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)

10 クローバーフィールド・レーン』(2016年)