ヘルタースケルター | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:蜷川実花
キャスト:沢尻エリカ/大森南朋/寺島しのぶ
配給:アスミック・エース
公開:2012年7月
時間:127分




さくらん』の5年後に公開された蜷川実花監督作品第2弾は,岡崎京子の伝説的コミックの実写化。『さくらん』の原作漫画家・安野モヨコもアシスタントを務めていたことのある岡崎京子だが,作家活動の頂点にあった1996年に交通事故で重傷を負い,後遺症で作家生命を絶たれた。しかし,休筆後20年以上を経てもなお,才能を惜しむファンの支持が衰えず,過去作品が断続的に復刊されたり映画化されたりしている。

タイトルの『ヘルタースケルター(Helter Skelter)』とは「慌てふためいて」「混乱している」「螺旋状の滑り台」などの意味。この作品中では麻田検事の台詞で「しっちゃかめっちゃか」と説明される。『さくらん』で描いた花魁の世界から,ファッションの世界へとシフトした蜷川実花監督の映像美が,怒濤のごとく押し寄せる2時間だ。

完璧な美貌で人々を魅了し,芸能界の頂点に君臨するトップ・モデル,りりこ(沢尻エリカ)。実は,彼女には絶対に知られてはならない秘密があった。彼女の美しさは,全身に施された美容整形の賜だったのだ。事務所の多田社長(桃井かおり)は「目ん玉と爪と髪と耳とアソコ以外は全部つくりもの」と言う。整形手術の後遺症のために免疫抑制剤の服用が欠かせないりりこの身体。だが,後遺症は確実に彼女の身体を蝕んでいく。

そんな中,美容クリニックをめぐる事件を追う麻田検事(大森南朋)の影がりりこに迫る。さらには,結婚を狙っていた御曹司の南部(窪塚洋介)が別の女と婚約。生まれついての美しさでりりこの座を脅かす後輩モデル吉川こずえ(水原希子)の登場。究極の美の崩壊と,頂点から転落する恐怖に追い詰められ,現実と悪夢の狭間をさまようようになるりりこだったが…。

妹の千加子(住吉真理子)の「お姉ちゃんは強いから綺麗になれた」という言葉に,りりこが「違う。綺麗になったから強くなれた」と返す再会シーンは象徴的。女性の飽くなき“美”の追求と,欲望と転落への道のりが,過激な性愛描写と極彩色のヴィジュアルで描き出される。共演は他に,に寺島しのぶ,綾野剛,新井浩文 など。

来年は,藤原竜也を主演に迎えた異色サスペンス『Diner ダイナー』と,小栗旬を主演に迎えた『人間失格』の公開が決定している。蜷川実花監督がスクリーンでどんな映像と心象を見せてくれるのか,楽しみでたまらない。