アーロと少年 | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:The Good Dinosaur
監督:ピーター・ソーン
キャスト:レイモンド・オチョア/ジャック・ブライト/ジェフリー・ライト
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
公開:2016年3月
時間:100分




6550万年前の白亜紀末,メキシコのユカタン半島沖に直径10~15kmの巨大隕石が落下した。巻き上がった大量の塵は数年間太陽光を遮り,光を必要とする多くの植物が育たなくなる。まず,植物を主食としていた草食恐竜が絶滅し,次いで,草食恐竜を食べていた肉食恐竜が絶滅した。というのが現在有力視されている恐竜絶滅の原因。

もしも,地球に近づいていた隕石が地上に衝突せずに通り過ぎ,恐竜たちが絶滅を免れていたら…という興味をそそるプロローグが導く物語。隕石の通過から数百万年後,恐竜は言葉を持ち,農耕や牧畜をするようになっていた。ようやく二足歩行のできるほどに進化した人間は,しかしまだ言葉を持たない。

ギザギザ山の麓でトウモロコシを作って暮らすアパトサウルスの夫妻・ヘンリー(ジェフリー・ライト)とイダ(フランシス・マクドーマンド)の元に,3匹の子供が産まれる。末っ子のアーロ(レイモンド・オチョア)は姉と兄より小柄で臆病。子供たちはすくすくと成長するが,怖がりのアーロは鳥に餌をやることさえできず,姉や兄にからかわれてばかり。そんなアーロに与えられた新しい仕事は,大切な食糧を盗む“生き物”を捕まえること。やる気いっぱいのアーロだったが,ワナにかかったのは人間の少年だった。初めて見る人間に驚きながらも,情をかけて逃がしてしまう。

それを見たヘンリーはアーロを連れて川辺にあった人間の足跡を追うが,激しい鉄砲水に遭遇し命を落としてしまう。失意のアーロは,サイロに忍び込んでいた人間の少年を追ううちに川に転落してしまい,見知らぬ土地で目覚める。途方に暮れるアーロを救ったのは,例の人間の少年スポット(ジャック・ブライト)だった。最初は反発しながらも,小さな体で懸命に守ってくれるスポットに,少しずつ心を開いてゆくアーロ。そうしてふたりは,アーロの家族が待つ家を目指し冒険の旅を始めるが,彼らの行く手には想像を絶する大自然の脅威や敵が待ち受けていた。力を合わせ困難を乗り越えながら,ふたりは言葉を超えた心で通じ合う,人生初の友だちになっていく。しかし,運命はふたりを引き裂こうとしていた…。

劇場公開時は3Dだつたが,2Dでも驚嘆させられるのがCGアニメの景観。柔らかく光を反射させるさざ波から木々をなぎ倒す濁流までと表情を変える川,風にそよぐ草原の穂や木の葉,繊細に揺れる光など,リアルを超えるほどの映像美を背景に,アーロとスポットの友情と成長が,弱肉強食のシビアな描写とともに描かれてゆく。

極力抑えられた台詞や,言葉を持たない人間という設定は,子供から大人まで見る者すべてに,多彩なアングルからの感情移入を促す。そしてそれは見終えた心に“温み”を植えつけてくれる。さすがはピクサー♪

吹替版ではアーロの母・イダの安田成美をはじめ,中盤に登場するTレックス一家のブッチ,ラムジー,ナッシュを松重豊,片桐はいり,八嶋智人が担当している。


映画クタ評:★★★★


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