百日紅 〜Miss HOKUSAI〜 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:原恵一
キャスト:杏/松重豊/濱田岳
配給:東京テアトル
公開:2015年5月
時間:90分




17年ほど林檎班やってる玖妙なので,主題歌が林檎ってだけでもう高評価は決まり! 今夜の【くた★むび】は,そこんトコご理解の上で読んでいただきますように…。

原作は,漫画家で,江戸風俗研究家やエッセイストでもあった杉浦日向子の20代後半の漫画作品。公開された去年は,46歳で早逝した彼女の没後ちょうど10年目だった。タイトルの『百日紅(さるすべり)』は,梅雨明けから秋にかけてたくさんの花を咲かせ続ける百日紅に,多作の北斎をなぞらえたものだという。

お栄(杏)は23歳の女浮世絵師。父は当代一の人気絵師,葛飾北斎(松重豊)。そんな偉大な父の下で代筆を務めながら,居候の善次郎(濱田岳)やライバル門下の売れっ子絵師・歌川国直(高良健吾)らと賑やかな毎日を送っていた。しかし,絵師としての才能に疑いはないものの,未だ恋を知らない彼女の絵は,上手いが色気がないと評されてしまう。そんな厳しい指摘に落ち込みつつも,持ち前の負けん気で不器用なほどまっすぐに絵と向き合っていくお栄だったが…。

舞台は文化11年(西暦1814年)の江戸。55歳の葛飾北斎が『北斎漫画』の初編を出版した年。この15年ほど後には最大の代表作『富嶽三十六景』シリーズが発表されることになる。主人公のお栄(おえい)は北斎の三女で後妻の子。

現代とくらべたら平均寿命も短く,死が身近だったし,灯りも少なく夜になると暗闇だらけだったこの時代。人々にとっては,この世とあの世は地続きで,亡霊や妖怪の存在も本気で信じられていた。“一寸先は闇”と腹をくくりながらも,日々を明るく過ごす。それこそが江戸っ子の粋。お栄と一緒に橋の中央に立つ盲目で病弱な北斎の末娘・お猶(清水詩音)の姿と,その聴覚に飛び込む行き交う声や音が,作品世界を象徴する。

江戸言葉の吹き替えで命を吹き込まれたキャラたちが,作品の中で自由に動き回るような自然さ。そして椎名林檎の主題歌『最果てが見たい』が歌い上げる,凛とした力強さに満ち溢れる伸びやかなエンディング。日常の中で薄れてしまいそうな勇気や,忘れてしまいがちな活力を呼び起こしてくれる。


映画クタ評:★★★★


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