失踪宣告は、婚姻を解消させ、相続を開始させるという、一律で強力な対世的効力をもつものです。したがって、請求者は、単なる利害関係人というだけでは足りず、相当に重大な法律上の利害関係を有する者と解すべきです。

 

利害関係人の範囲には、配偶者、法定相続人、親権者、不在者の管理人などがあげられますが、そのほか法人や未帰還者に関する特別措置法による厚生労働大臣も、含まれます。

 

法定相続関係のない親族は、利害関係人ではありません。

債権者・債務者そのほか取引の相手方は、不在者の管理人を相手方として、債権の取立て・債務の弁済ができるので、一般には利害関係があるとはいえません。

 

不在者の死亡によって消滅する債務を有する者、すなわち、終身定期金債務者、恩給債務者たる国などは、利害関係を有すると解されています。

 

これに関する事例として、次のようなものがあります。

 

不在者Aの妻Bが、同棲した者Cとの間にできた子を、A・Bの子として届け出、やがてAとの虚偽の協議離婚をし、Cとの婚姻届を出しました。

Cは、子を自分の籍に入れるため、その前提としてAの失踪宣告請求の本訴を提起しました。

 

この場合、Cが利害関係者と認められるかが問題となりましたが、裁判所は、Cは事実上の利害関係を有するけれども、法律上の利害関係を有しないと判断しました(大審院判例昭和7年)。