Ballad Box Soloist 2022
2022.9.16
@京都 紫明会館
田澤くんの弾き語りツアーに行ってきました。
初めての弾き語りワンマンツアーは
全12か所で
ファイナルはご自身の誕生日。
会場の収容人数は30名前後から
200名強と様々だけど、
これには生の声が届くことを
意識して選ばれたそう。
この日の会場は100名前後。
『作詞、作曲を自ら手掛けるほか、
ステージ上では
ボーカリストに徹する一方で、
ギター、ベース、ドラム、
プログラミングまでこなす
マルチプレイヤー』
そんな彼が新たな挑戦に選んだのは、
アコースティックギターを奏でながら
歌うこと
これまでソロプロジェクトは
バンド形態か
ピアニストを伴っての弾き語りで
展開されてきた。
わたしは
その世界に深く酔いしれたい
と思っていたので、
田澤くんのソロは
音数が少なければ少ないほど
いい気がしていた。
ピアニストが固定されていたことも
それを助けてくれた。
その際のパワーバランスは
田澤くん:山本裕太くん=6:4
(わたしの脳調べ)
もしくは 5.5:4.5
∴田澤くんは60%の配分。
なのでアコギの弾き語りでの
ワンマンツアーを発表されたときは、
(これは100%田澤くんではないか!)
と、貴重な機会に沸いたのだった。
紫明会館は3階建ての
シンプルな外装の古い洋館だった。
日本の伝統・和の風情を極めている
京都の街に、こういう西洋の建物が
あるなんて意外だった。
戦前の建築物で、
国の登録有形文化財に指定されている。
そんなところでライブやっていいの
いいそうです
外壁は淡い茶色だったけど、
内壁はまっ白。
窓はすべて丸窓やアーチ窓で、
こげ茶色の木枠。
軋む木製の床、階段の踏み板も木製。
至るところに
ステンドグラスの装飾という
レトロな雰囲気で、
スパニッシュに
アールデコを混ぜたスタイルなんだとか。
階段を昇りきったら扉の横で
ドリンクを受け取って講堂に入る。
手首には再入場不可の紙製のバンド。
折り畳みの椅子が並ぶ客席。
正面が舞台で、
左右の壁にはアーチ窓が並び、
しかもその窓は開けられているという
ライブハウスにはない開放感。
舞台上部に施された装飾が特徴的。
3階の窓から見える景色、
静かに日が暮れていく。
こういった会場では演者はどこから
入場されるのだろう。
舞台の両隣にそれぞれドアがあって、
左側のドアから何度も
スタッフの方が出入りする。
そこから出てくるのかな?
舞台袖に
舞台裏とつながっている扉があって、
そこからステージに移動されたよう。
登場の合図はなくて、
気が付いたらいた。
舞台袖から顔をのぞかせてから
中央へ歩を進める。
客席に何と言って
登場を知らせたらいいものか。
あれは気恥ずかしさだったのかな。
照れくさそうな
なんか可愛らしい登場の仕方だった。
全身黒い衣装。
分け目が7:3みたいだった。
銀色の髪。
控えめな照明。
肩ぐらいの高さに間接的なものが2台と
足元に2台。
マイクスタンドにもひとつ、
小さな灯りを下げていた。
真上からの照明がなかったので、
顔の陰影の付き方がいつもと違った。
最初の曲で、
「初めて言うわ、手拍子頂戴」
と言った。
初めて聴く曲だった。
オーディエンスと共有できる曲。
こういう曲も持ってたんだ。
中盤では、
『田澤の恋ソング』と称して
続けて3曲歌った。
この3曲とは、
『カナリア』『恋の彼方』
『赤い大きな月の夜』
だったと記憶している。
「皆さんは誤解してるかもしれませんが」
そう話し始め、恋と愛を対比させた。
恋は自分の心を満たすもの、
そして
『無償の愛』というワードを用いて
愛について言及。
愛とは相手を想い、
相手のために行動すること。
「愛すると決めたら行動する」ときっぱり。
そのように思わせる相手がいるのだろう。
「この曲を作った時は
まだそういう心を
持ち合わせていなかったので」
と振り返るように言う。
恋(crush、in love)であって
愛(love)ではないので、
※( )内はわたしが付けた補足
Love songではない、
(ゆえに恋ソング)
と、そう曲の紹介をされた。
そこまで深く考えて
ラブソングを書いてる人って
いないんじゃないか、と思った。
大概のラブソングは
吐き出すために
書かれていると思うもの。
深い人物像が垣間見えた。
過去に体験した想いを
語っているように思われたのだけど、
そうでもなかった。
歌詞に自分を投影しているわけでは
ないみたい。
そのことをこう表現した。
『田澤孝介を100%としたら、
歌う田澤は2%』
=田澤くんという一個人を1としたとき、
ボーカリストの田澤くんには
素の0.02が表出されている
ソロ作品では、
もうちょっとご自身を出している気が
していたのだけど
(わたしの感覚では20%)、
思った以上に出していなかった。
全然見えないの図
芸術家な方を理解するのって
難しいのだろうなぁ…と思った。
田澤くんの学生時代のお話も
とても興味深かった。
この日の彼からは
懐古的な印象を受ける。
会場となった講堂の、
昭和を漂わせる雰囲気が
そうさせたのかもしれない。
ここは京都教育大学付属
京都小中学校の敷地内にあって、
京都府師範学校の同窓会館として
建築された。
文化施設であることもあり、
窓が多くて学校の古い教室を思わせる。
懐かしいような
温かい気持ちになるような。
高校入学を辞退した時のことを
話してくれたのだけど、
昨日のことにように鮮明に覚えていて、
当時の情景がありありと
浮かんでいるのだと感じた。
プロのギタリストになると
決めてからのこと。
担任の先生を
名字にちゃん付けで呼んでいて、
親しまれていたよう。
学年主任よりも上の立場にあった、
貫禄のある先生のことは
さん付けで。
入学を控えた時期に学校に呼び出されて、
お母さんと担任の先生と
学年主任の先生と、
そのさん付けの先生とで
2~3時間話し合われたそう。
その上長の先生は
担任の先生と田澤くんのやり取りを
じっと聞き、その間は一言も発されず、
最後にこう言ってくれた。
「入学だけはしろ」
という他の先生方の主張に、
「そんなことするなら行かなくていい」
「どちらに対しても失礼だ」
(入学する高校にも、田澤くんにも)
その先生は
もうお亡くなりになったのだと
少し寂しそうに言っていた。
学生時代は喧嘩をよくされたよう。
やんちゃそうなお話だった。
たくさん殴られたけど
その分殴ったのだったか。
だから殴られる痛みは知っていると。
京都にはWaiveの最初のMV撮影で
2回来られたとか。
いろいろと懐かしい思いに駆られたよう。
京都駅で修学旅行生の
長い行列を眺められたことも、
学生時代に帰るきっかけに
なったのかもしれない。
マンモス校やなぁ…
修学旅行、行けるようになってよかったなぁ…
なんて話しながら
スタッフの方と列の切れ目を
待ってあげていたそうです
「暗い曲は目つぶっても書ける」
とご自身のカラーを匂わせつつ、
新しい作風の曲が欲しくなったみたいで、
「初めて入った店の焼きそばがおいしかった
みたいな曲を書きたい」
といった意欲も話されていた。
それと
楽しみ方を強制しないMC、
「いつも言うてるやつな。
楽しみ方は人それぞれ。
暗い歌は暗く~」
というものと、
「やりたいことあったらやれ」
やりたいことなぁ…
そうだよなぁ…
窓を開けていたから
虫が入ってきた。
蛾のような羽のある虫が客席を舞う。
苦手な人は多いようで、必死で避けている。
田澤くんはその様子を見守る。
そしてそのまま飛ばしてあげるよう
声をかける。
田澤くんは
「殺生をしなくなった」
と言っていた。
「昔は暇さえあれば人を殴っていたのに」
と。
たぶん冗談
彼が虫を殺さなくなったという話は
ここで知った。
こっちに飛んでこなくてよかった。
キャッチアンドリリースとか
できないし。
「長くやっている曲だけど、
作ったときとメンタルは変わってない」
そう話して歌った『生きてこそ』。
そのように言われると嬉しい。
この曲は、軸はぶれずに
歌い続けてほしいと思う。
『夜に願えば』を歌い終わった後では、
曲中の『あなたが感じる幸せの一つに
僕がいられたらいい』という歌詞に触れ、
「歌いながら思ってる。偉そう?」
と聞いていた。
優しい歌だよね。
最後の曲は『Wave Rider』だった。
この曲にも手拍子を求めた。
楽しい。
行動を起こせば波は立つ。
それに乗ろうと言ってくれる歌は
明るくて心強い。
最後に
マイクスタンドとの距離感が掴めずに
演奏中にマイクに頭が
当たってしまったことを詫びつつ
「また来て!」と言った笑顔がよかった。
歌はさることながら、
アコースティックギターによる
さまざまな表現方法も
素晴らしかった。
伴奏すら田澤くんということは、
リズムもテンポもアクセントも
和音も単音も
語られる想いも含めて
そこにある空間すべてが
田澤くんだった。
田澤孝介@takayuki_tazawa弾き語りツアー4ヶ所目 京都 紫明会館 すごく素敵な環境で演奏させていただきました。 「ここでしか鳴らない音がある」 これはどの会場で歌っていても思っていることですが、改めてそれを感じたステージでした。 また必ず歌いに来ま… https://t.co/xKX7GUUVOm
2022年09月16日 22:56
初めての
100%田澤くんのライブは
少し懐古的で、
人柄や背景などに
一段と深みと温かさの増した
満ちたものになりました。
素敵なお話と
素晴らしい時間を
ありがとうございました。
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