タクティクスオウガを読み物風に紹介しています。

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読み物オウガ【1】

http://ameblo.jp/k-lh/entry-10803838703.html

キャラ解説【デニム・カチュア】

http://ameblo.jp/k-lh/entry-10805930168.html




読み物オウガ【2】


第一章 僕にその手を汚せというのか


ちるちる。


柄を握る手が震える。

港町ゴリアテの路地に身をひそめて、

仇敵の動向を窺いながら

デニムは自分に言い聞かせていた。


違う違う怖いんじゃない。

こんなの、ただの武者震いだ。


弱気に傾く心をそう叱咤してみるも、

大した効果は見込めない。


これから自分が行おうとしている

大それた計画のことを思うと、

早くも挫けそうになる。

思わず救いを求めるように

視線をさまよわせると、

すぐ傍らで息をつめている

姉カチュアと目が合った。


彼女は、弟の不安を目ざとく見咎めると、

安堵と皮肉の入り混じった、

保護者の笑みを浮かべてみせる。

今にも説得を切り出しそうな唇から

デニムはあわてて目をそらした。


やっぱり、やめよう。……ね?

私たちに勝てるわけないわ。


実際、カチュアはつい先ほどまで

この計画を思いとどまらせようと

必死に言葉を重ねていた。


冷静に考えれば、

成程、カチュアの

言い分は正しいだろう。

しかし、正しければ正しいほど、

その言葉に屈することだけは

断じてできなかった。

なぜなら、デニムは

練り上げた作戦に

夢を見てしまったからである。


作戦とはすなわち、

一年前、町を襲い、火を放ち、

非道の限りを尽くした挙句、

神に仕える父をさらった

騎士たちの代表を

暗殺するというものだった。


猛反対する姉を

強引に説き伏せたのは

他ならぬ自分と、

そして、計画を主導した

幼馴染のヴァイスである。


経験の浅さを夢見る力に変えて、

デニムもヴァイスも

すっかり頭に血がのぼっていた。

冷静さなど自ら手放してこそ

一人前の男なのだと

心に奇妙な言い訳をして、

奮い立つ自分たちに

もう夢中だったのである。