日米間で自由貿易協定が締結されようとしている。
安倍総理は「ウィン・ウィン」だというが、真実は、日本にとっては得るものがほとんどなかった。
そして、大きく懸念されるのが、日本の食の安全がますます危険にさらされるということだ。
今回、牛肉の関税が大きく引き下げられることになった。現在の38.5%が即26.6%に、そして、段階的に下がり、15年後には9%まで下がることになった。
米国産牛肉には、成長を即す肥育ホルモンが使われている。これは男性ホルモン・女性ホルモンのようなもので、筋肉質にしたり、肉質を柔らかくしたりする。
おまけに、すでに使用されなくなったとされる「成長ホルモン(細胞分裂を活性化させる)」も一般の米国産牛肉から検出されているという。
これらが肉に残留し人間が食べると、人間のホルモンが撹乱され、アレルギーやホルモン依存性のガン(乳ガン・子宮ガン・前立腺ガン)が起きやすくなるという研究結果が発表されている。
事実、EUではこれらが使用されていることを理由に輸入禁止措置がとられている。ロシア、中国も禁止しているようだ。
ちなみに、オーストラリアは禁止国向けにはホルモン剤を使用しない飼育方法で牛を飼っているらしい。
日本は、国内では、肥育ホルモン・成長ホルモンともに使用禁止となっているので、国産牛肉は安心できるかもしれない。(ただ、オーストラリアなどから生きた牛を輸入して、日本で育てて出荷する場合もあるらしいのでそこは要注意だが)
しかし、輸入牛肉に関しては残留基準値を守っていればOKとしている。
つまり、今や、日本は、EUだけでなく、ロシアや中国も買わなくなったホルモン剤使用の牛肉のはけ口となっているわけだ。それが、この度の関税引き下げにともない、ますます米国産牛肉が入りやすくなるということだ。
自動車を買ってもらうために、牛肉の輸入を増やす。結果、日本人の健康は捨てられる。
「危険性は科学的には証明されていない」・・輸出側や日本政府の見解だ。しかし、このようなものは、証明されてからでは遅いのだ。
水俣病もそうだった。「危ないかも」とはかなり前から言われていたが、「科学的には証明されない」の一点張りで有機水銀を垂れ流し続けた。その結果、防げた人々までも多くを水俣病にしてしまった。
『予防原則』というのがある。「危険性のあるものは、証明されていなくてもとりあえずは禁止する」これが、国民の健康と命を守るべき政府の本来とるべき姿勢ではないだろうか。我が子に対してならばそう考えるだろう。
「危険って決まったわけではないけど、危険だと言っている人がいるから我が子に与えるのはやめとこう」普通こうなるだろう。まして、EU、ロシア、中国・・・、これだけの国が、人々が危険だと言っているものだ。「輸出国側の言い分だけを信用して輸入を増やす」・・本当に人々の幸せを願っている政府とはとても思えない。
ほかにも、農薬の残留基準。
日本はどんどんゆるくしていっている。今や日本の野菜が一番危険ではないかとさえ言われている。そのあたりは、また、稿を改めて書いていきたい。
ちなみに、日本政府は、TPPの時も、今回の日米交渉でも、農家対策はすると言う。
しかし、たとえ、農家の所得が減らないような対策を取ったとしても、アメリカは牛肉の輸入量をど〜んと増やして欲しいのだ。増やさなければ怒ってくるのだ。根本はそこだ。
輸入量が増えるということは日本の農家の生産量は減らさせざるを得ないということ。どんなに農家の対策を取ってみても、根本的に「作るな」ということだ。
「日本も輸出を増やせばいいではないか〜。」日本が輸出を増やせる量くらいの輸入量の増加ですむのならそれでいいかもしれないが、現実は、輸入量増加の方がはるかに多い。
結果、大規模化したところだけが生き残り(それも大きな借金を抱えて)、中小は切り捨てられ、日本の牛肉生産量は総量として減少していく。食料自給はどんどん遠のき、食をアメリカにさらに握られていく〜、しかも危険なもので〜。
国産の牛肉をできるだけ安く食べられる仕組み、少々高くても買える所得対策・・・、これらを何とか作っていきたいものだ。
(参考 2019.10.11.週刊金曜日 等)