瀧本哲史さんの「僕は君たちに武器を配りたい」が面白い | マイペース子育て日記

瀧本哲史さんの「僕は君たちに武器を配りたい」が面白い

久々におすすめ書籍です。

僕は君たちに武器を配りたい  瀧本 哲史著

今の日本社会の現状を示した、特に学生の方や社会人なりたての方におすすめしたい書籍です。


もちろん、それ以外の方が読んでも、大いに参考になる内容です。
20代後半や30代の人にとっては、「そうそう、確かにそういうこと、何となく思ってたんだよな」という印象を持たれる方もおられるのではないかと思います。

自分たちが今の社会に感じていた漠然としたもやもやを、ずばり提示してくれているような・・・。


では、個人的に印象に残ったキーワードをいくつか。

P7
□自分の時間と労力、そして才能を、何につぎ込めば、そのリターンとしてマネタイズ=回収できるのかを真剣に考えよ

重要なのは、まず資本主義の本質を理解すること。
そして、そのメカニズムを正確に認識し、日々刻々と変わる情報を察知して、インプットを変えることで、アウトプットである自分自身の行動を具体的に変えることだ。

P20
□昨今の勉強本ブームも福沢(諭吉)と同様に、ブームを作った「仕掛け人」が「ビジネスのために」起こしたのである

P29
□こうした急激な社会変化が、あらゆるところで起こっているのが現代の社会である。今までうまくいっていたやり方が通用しなくなり、これまでと同じ方向性でがんばっても、豊かな生活を営むのは難しくなってしまった・
 物心両面ともに幸福で充実した人生を過ごすには、これまでとはまったく違う要素が必要なのではないか。そのことにみな気づき始めているのだが、かといってどうすればいいのかわからない。それが今の時代を覆っている閉塞感の大きな一因だと私は考えている。

序盤では、いわゆるスキルアップや、以前から流行っている資格ブーム等に疑問を投げかけています。


以前からの投資本ブームや自己啓発本ブームの中で、よく見かけるようになったのが「自己投資はもっとも投資効率の高い投資である」という論です。

この論が正しいか否かは、人によって考えが分かれると思いますが、私自身は今でもある程度正しいと思っています。

一方で、この言葉は、「ときに罪作りな側面もあるのではないか」と思うこともあります。

勉強・スキルアップに打ち込むことで、「がんばっていればきっとなんとかなる」と思いずっと必死に努力を続ける。自己投資という名目で、大学院、資格試験予備校、高額なセミナーなどに数十万、数百万と、貴重な時間を投資した先に、必ずリターンがあるとは限らない。そういう話も、直接ではないですが、メディアの記事やネットで見かけます。


私自身も、これは成果にならなかった、無駄だったという投資が少なからずあります。(一方、役に立ったことも多くあるため、すべてが無駄ということはけしてありません)

教育・自己投資ビジネスを展開する側としては、リターンがなければ、「本人の努力不足、自己責任」とする一方、成功した人がいれば、その人たちを大体的にとりあげ、「成功者続出!」とアピールできます。

もしかしたら、その成功者の裏には、何倍、何十倍もの見切りをつけた人、挫折した人がいるかもしれません。しかし、これに対しても、「挫折者や見切りをつけた人は置いておけ!実際に成功者はいるんだ、ネガティブなところに目を向けるな!成功だけを考えろ!」と。

このように、

あくまで「自己責任

という魔法の4文字言葉を使えば、「そうだね、成果が出なかった人に責任があるんだね」という方向に持って行くことができます。


自己投資に打ち込む人が、熱心に努力、実践している間はいいですが、もし何年、十年、二十年とやり続け、成果につながらなかったとしたら、果たしてその人はどのようなことを考えるだろうか?そんなことも考えてしまいます。



それと、個人的にピックアップしたい3点。

□(アメリカの弁護士供給過剰なマーケットで)儲かっているのは、ニッチなビジネスの市場を見つけて、自分たちでマーケットを作り出した弁護士事務所だ。

稼げない「野良弁」と、すごく成功している弁護士を分けるのは、弁護士資格ではなく、そうした新しいビジネスを作り出せるかどうかなのだ。
そこで求められるのは、マーケティング的な能力であり、投資家としてリスクをとれるかどうかであり、下で働く人々をリーダーとしてまとめる能力があるかどうかだ。
 高学歴で難度の高い資格を持っていても、その市場には同じような人がたくさんいる、ということならば、戦後すぐの、労働者を一山いくらでトラックでかき集めた頃と何ら違いはない。「弁護士いる?弁護士。日給1万5千円で雇うよ」といった具合に。

これは、当然他士業でも言えることですし、特に若手の士業の方はうすうす気づいていることだと思います。ただ、ここまでストレートに表現されると、違和感を覚える方もいるかもしれません。それゆえ的を射た表現でもあります。

p151
だからイノベーター型の起業家を目指すのであれば、特定分野の専門家になるよりも、いろいろな専門技術を知ってその組み合わせを考えられる人間になることの方が大切なのである。
 他の業界、他の国、他の時代に行われていることで「これはよい」というアイディアは「TTP(徹底的にパクる)」すればよいのである。
 イノベーションをある業界で起こすための発想術は、実はそれほど難しいことではない。その業界で「常識」とされていることを書き出し、ことごとくその反対のことを検討してみれば良い。
(中略)
このように発想手段として、「何かを聞いたら反射的にその逆を考えてみる」というのはイノベーションを生み出すうえで、非常に有効な手法である。
今までのやり方でうまくいっていないとするならば、そのまったく逆をやってみたほうが成功する確率が高まることは、往々にしてあるのだ。

これも大いにヒントになると思います。

さらにもう一つ。

P157
□自分の頭で考えない人はカモにされる
実は「情報弱者の大衆から広くお金を集める」手法を行っているのが、金融業界だ。(中略) 成功している投資会社は、個人市場からは一切資金調達をしない。(中略)つまり一般投資家は、本当に儲かる投資先には、アクセスすることすらできない仕組みになっているのである。

個人を相手に金融商品を売る会社にとって、一番ありがたい顧客となるのは、「自分の頭で物事を考えない」人々だ。(中略)つまり、個人を相手に商売するときは、「人数がたくさんいて、なおかつ情報弱者のターゲット層」の方が効率がいいのである。

FXはまさに、そういう金融ビジネスモデルの筆頭である。一言で言えば、「中産階級向けパチスロ」と言って良いだろう。
(中略)
しかし何万人もやっていれば、たまには成功する人が出てくる。そうしたFX業者は、一人二人の成功者を取り上げ、針小棒大にその成果をアピールし、次の「カモ」の誘い水とするのである。基本的には、ネットの高額な情報商材となっている「パチンコ必勝法」や、「ナンバーズはこうすれば当たる」といった眉唾の情報と変わらない。実際、FXの業界で有名な人の本のプロフィールをよく見ると、元パチプロだったりする。

P154
(ハーレーダビッドソンを例に取り上げ)しかしこの「信者ビジネス」にも問題点がある。それはこのビジネスを続ければ続けるほど、信者のレベルが低下していくことが避けられない、ということだ。(中略)
だから常に新たな信者をリクルーティングする必要があるのだが、ブームを持続させようと新製品を無理して出し続けるうちに、ますます「教祖に依存して、自分の頭では物事を考えない人」を狙わざるを得なくなってくるのである。

その事例として参考になるのが、ライブドア元社長の堀江貴文氏のビジネスだ。(中略)いわゆるマーケティング的に言えば「遅れた層」(ネットスラングで言えば「DQN(ドキュン)」と呼ばれる人々)をターゲットに、サービスではなく彼の会社自体を売ることにしたのである。

もちろん、堀江氏が意図してやっていたのか、周りがそのように堀江氏を持ち上げたのかはわかりませんが。

そういえば、DQNビジネスとして今真っ先に思い浮かぶのが、「ソーシャルゲーム」。もちろん、固有名詞は出さなくとも、すぐに思い浮かぶはず。

ソーシャルゲームも、近いうちに規制(特に未成年保護のための規制)が入るような気がしてなりません。

金を出してアイテムを買ったり、ヤフオクで高額レアアイテム(デジタルデータで原価はないに等しい)を購入したり、友人を勧誘してポイントやアイテムを手に入れる。ある意味一部の宗教やマルチが思い浮かんでしまいます。

ライブドアつながりでもう一つ余談。

ライブドアのサイトのニュースタイトルは、まさに「DQNホイホイ」です。
(ある種のほめ言葉の意味も含んで)

例えば、

否定すればするほど善人説が強まる江頭2:50

猪木のビンタで「小顔になった」

ゆうこりん、こりん星は爆破済み

のように、「なんとなくクリックしたい」と思わせるような、絶妙なタイトルがつけられています。

他にも、東スポ・大スポのようなインパクトのある表題をつけたりと、ともかくエモーショナルな表現、詳細を知りたくさせる表現が目立つのです。

品がないと言えばそれまでですが、ある種のユーモアも感じ、嫌いではありません。

一方、あえて直接リンクはしませんが、こういう記事もあります。

年金が1円ももらえなくなる!?


というタイトルで、前半は、国民年金の資金が2020年代に底をつくことを、真面目っぽく述べています。

そうか・・と思って読み進めると、


ところで皆さんは本業や預金以外にお金を生み出す方法を考えていますか?実は最近、将来に不安を抱くビジネスパーソンたちの間でFXの自動売買ソフトが話題になっているとか。ちなみにこのFXというのは為替相場の動きに連動した金融商品。確かにこの年金問題は、「年金は国民の義務」とずっと言い続けてきた国が責任を持って解決すべき問題。しかし、正論だけを口にしていても困るのは自分自身です。であれば、皆さんも将来を考えるうえで、○○にも放送されたこういった資産運用ツールを検討してみてはいかがでしょうか?


と、いきなりFXの自動売買ソフトの宣伝。


つまり、

インパクトのある見出しで注目させ、クリックさせる

このままじゃ危険ですよ!と煽る

読み手を混乱させたところで、「解決策はこれです」と売りたい製品・紹介ページなどを提示


さすがに普通の人は違和感を感じると思いますが、もし、酒を飲んでいて判断力が鈍っていたりすれば、興味本位で解決策を提示するサイトへのリンクをクリックしてしまうかもしれません。

そういうサイトにアクセスしたユーザーが、クレジットカードや、ネットバンクの24時間振り込みできる口座を保有していたら・・・・・?



上記のサイトは、ある意味宣伝の意図がわかりやすいので、まだ良心的かもしれません。もっと巧妙に設計されたサイトも、あるのではないかな・・と想像してしまいます。



他にも多く引用したいところがありますが、相当長くなってしまいそうです。

すでにweb上には、僕は君たちに武器を配りたい の的確なレビューが複数ありますので、リンクを張らせていただきます。

また、特に印象に残った部分を、太字にして引用させていただきました。

エリエスブックコンサルティング 土井英司さんのメルマガ
ビジネスブックマラソン
http://eliesbook.co.jp/review/%E3%80%8E%E5%83%95%E3%81%AF%E5%90%9B%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AB%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%82%92%E9%85%8D%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84%E3%80%8F%E7%80%A7%E6%9C%AC%E5%93%B2%E5%8F%B2%E3%83%BB%E8%91%97-vol2620

トレーダー、エキスパート、マーケター、イノベーター、リーダー、インベスター…。この6つのなかでも、今後「トレーダー」と「エキスパート」が苦しくなってくるという指摘は、携わっている人にとっては、ドキッとします。

士業などはまさにエキスパートに分類されますね。
そして、マーケティング発想がなければ、コモディティになってしまう。

ある会社や、ある個人が、みんなから悪口を言われて、たいへん厳しい状況にあるとき。そんなときこそ、投資を検討するまたとない機会だ。なぜならば、人は苦境に苦しんでいるときに応援してくれた人のことを、けっして忘れないものだからだ

これも、「確かにそうだよな」と思う一節です。

もちろん、関わり方、助け方は、適切な行為を選ぶべきです。

社会的にどうかと思うような行為をしているところに関わるべきではないですし、連帯保証、連帯債務などの保証人になるということは、自分が全額返せるという余裕がない限りすべきではありません。

また、依存心の強い人に中途半端に関わったり、一度自分を裏切った相手を助ける必要は全くもってありません。

そのことを踏まえた上で、困っている人を損得感情抜きで、自分にできる適切なレベルで助けることは、ぜひできるようになりたいです。

smoothさん
http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/51963112.html

とにかく考えるべきは、「リスク」と「リターン」であり、瀧本さん曰く、人生の重要な決断をするときに覚えておくべきは、「リスクは分散させなくてはならない」のと「リスクとリターンのバランスが良い道を選べ」の2点とのこと。
 

これもまた重要な指摘だと思います。
リスク分散と、リスクとリターンのバランス。


また、税理士のsmoothさんなら、きっと言及されるであろうという部分、やはり書かれていました。

イノべーター的な観点からすれば「落ち込んでいる業界にこそ、イノべーションのチャンスが眠っている」と考えられる。
 なぜなら、それらの事業の根本が、人間の知的欲求を満たしたいという思いや、より快適な場所に住みたいという根源的な欲求に基づいているからである。問題はその欲求に、既存の業界大手企業が提供する商品やサービスが応えられなくなっていることであって、ニーズ自体が消滅しているわけではまったくないからだ。

士業の業界も、単なる書類作り、手続きだけなら完全にコモディティです。
その他の業界でも、ニーズに応える商品、サービスを作れば活路は見いだせるという心構えがあると、チャンスをつかむきっかけが作れるのかもしれません。


えぬ氏さんのブログ、KoToYuMinより

武器はまだ配られていない(「僕は君たちに武器を配りたい」まとめと感想)
http://kotoyumi.blog59.fc2.com/blog-entry-65.html

ゲームのルールを知るということはゲームに勝つ上でもっとも基本的なことであり、かつ重要なことだ。
チェスや囲碁の名手など、ありとあらゆるゲームの達人が、ゲームのルールを知り尽くすことが肝要という。

そういった意味で、資本主義社会のルールを示した本書は、資本主義社会というゲームで勝つ上で最重要と位置づける事ができる。

だが、これでもまだ、本書を読んだだけでは「武器はまだ配られていない」
本書は現実世界の認識と、「それでどういう人を目指せばいいの?」という疑問に答えたに過ぎない。
いわば、心構え的な本だ。

と、あくまでこの書籍にヒントはあるけど答えはないことを「武器はまだ配られていない」と表現していることに、ブログ執筆者であるえぬ氏さんのユーモアを感じました。


いろいろと雑多な内容になりましたが、結論をいうと

「ぜひ読んでほしい!」

という一言になります。

僕は君たちに武器を配りたい の中にある様々な情報が「腑に落ちているか(知っているかではない)否か」で、今後の人生で起こりうる事への対応が変わってくるのではないか、という印象を持ちました。

それと、講談社さんと著者の瀧本哲史さんにリクエスト。
電子書籍・PDF等の形でいいので、ぜひ完全版が読みたいと思っています。

久しぶりに、没頭してマーカー片手に読んだ本でした。