人生を変えた脳と心の取扱説明書 | カウンセラー会計士・税理士 藤田耕司   ~心と経営と人生と~

カウンセラー会計士・税理士 藤田耕司   ~心と経営と人生と~

心理学・脳科学・哲学を高校の頃より勉強し、『人間』とは何ぞやについて学んできました。
現在、会計士・税理士・心理カウンセラーとして生きていく中で、様々な人間ドラマに遭遇し、そういった経験を通して『人間』の理解を深める上で気付いたことをシェアしていきます。

公認会計士・税理士・心理カウンセラー。この肩書きで私は経営コンサルティング、税務の仕事をさせていただいている。名刺交換の際などにこの肩書きをご覧になった方のうち7割くらいの方から次のようなご質問をいただく。

 「公認会計士・税理士という資格と心理カウンセラーという資格は正反対のタイプの資格のように思うが、その組み合わせにどういう意味があるのか?」

 一見すると、数字と心は正反対のもののように見えるだけに、そういう疑問をお持ちになられるのも無理はない。しかし、何人かの経営者の方からは次のような言葉をいただく。

 「公認会計士・税理士と心理カウンセラー、これは理想的な組み合わせだ」。


 公認会計士や税理士は様々な経済活動の結果としての数字を扱う。様々な経済活動の背景には人間の判断や行動があり、その判断や行動の背景には人間の心や感情の動きがある。

 そのため、公認会計士や税理士が扱う数字は人間の心や感情の動きの結果を意味するものであり、その心や感情の動きの結果を会計というルールに基づいて表現したものが決算書に記載する数字となる。

 そういった意味では、美術は目で見た物を表現するアート、音楽は耳で聞いたものを表現するアートであるように、会計も人間の心や感情の動きに基づいて行われた経済活動を数字というツールを用いて表現するアートであると言える。

 過去の経済活動の結果としての数字を集計、計算するのみであれば、人間の心や感情を扱う必要性は大きくはないかもしれない。

 一方で、未来の数字を良くしていくためのコンサルティングを行うのであれば、数字が人間の心や感情の動きの結果という意味を持つ以上、人間の心や感情について様々な経験や専門的な知識を有していないと効果のあるコンサルティングは難しい。

 会社経営において売り上げを伸ばそうとするのであれば、お客様という人間の心や感情を理解することが必要となり、組織のパフォーマンスを上げようとするのであれば役員、従業員という人間の心や感情を理解することが必要となる。

 人間の心や感情の理解を無視して、数字だけを良くしようとすることは一時的な効果をもたらそうとする対症療法であり、根本的な治療とは言い難い。病気の患者に痛み止めだけ処方しても、痛み止めが切れればまた痛みはぶり返す。

 大切なのは痛みの原因を理解し、その原因を治療することである。




経済活動で高い結果を出す人は人間の心や感情について深い洞察と理解を有している。それが心理学のような学問という形で学んでいなくとも、これまでの人生における人間洞察から、本人の中で感覚知や直観として積み上げられたものがある。

 こういった感覚知や直観に基づいた判断や行動がお客様や従業員といった人々の心をとらえ、その結果が経済活動として反映される。

 そういった感覚知や直観を持つ彼らはいわば人間の専門家なのである。

 勉強は嫌いだからと言って大学には行かずに10代で起業し、15年以上にわたり増収増益で会社を経営している社長がいる。彼に心理学の知識はないが、彼の経営の話は泥臭い経営の現場から積み上げられた、まさに生の心理学の講義である。

 心理学の専門用語は使わないものの、それに代わる分かりやすい言葉を自ら創り、その言葉を使って誰にでも分かりやすくお客様や従業員の心の動きについて話をする。このセンスの良さには脱帽である。

 数年前、その社長に簡単な心理学の講義をしてみた。すると、「俺がいつも何気なくやっていることは心理学的にも正しかったんだ!」と喜んでいた。

 こういった現場の成功事例と心理学とを重ね合わせて分析してみると、非常に興味深い発見がいくつもある。そういった事例の積み重ねが私の財産となっている。

 人間の判断や行動を司っているのは心である以上、心理学についての学びとは「人間」に関する学びであると言える。そして自分が人間である以上、それは「自分」についての学びでもある。

 こういった学びを深めるほどに、経営や会計がより深く、より面白みのあるものになってきている。




 そもそも私が公認会計士・税理士の道を歩めるようになったのも、実は心理学をはじめとする人間に関する学びのおかげだった。

 私が心理学の勉強を始めたのは大学受験の失敗を経験した18歳の時である。

 故郷の徳島県で公立高校に通っていた私は野球一筋の高校生活を送っており、高校3年まで偏差値という言葉も知らないような学生だったが、その時知った自分の偏差値は40ちょっと。40という数字が良いのか悪いのかも分からなかった。

 高校3年の夏、甲子園の県大会予選で我がチームは負け、高校野球生活にピリオドを打った私は、そこから勉強モードに切り替えた。

 野球部の練習がかなり厳しかったことから根性には自信があり、体力の限界まで勉強すれば第一志望の大学に合格できると思っていた。第一志望の大学の偏差値は60だった。

そして、8月から1月までの半年間、体力の限界まで勉強し、第一志望の大学のみを受験した。

 結果はすべて不合格。あれだけ勉強したのに不合格とは、というショックから、しばらく途方に暮れていたが、そんな中でふと思いついた。

 「勉強というのは脳ミソを使う。であれば先に脳ミソの取扱説明書を読んだ方がいいのではないか」。早速本屋に行き脳に関する本を買い集め、読み進めていくと、記憶のメカニズムに関するいくつかの記述があった。

 また、脳の本には心理に関する話も載っていたことから心理学にも興味を持つようになり、心理学の本も読み始めた。すると、メンタルケアの話やモチベーション維持の方法などが書いてあった。

 記憶のメカニズム、メンタルケア、モチベーション維持といった脳や心の構造に関する記述を読みながら私は痛感した。もっと早くこれを知っておけば良かったと。

 それから浪人生活がスタートし、これらの内容を生かした独自の勉強法を組み立てて受験勉強を進めていった。記憶のメカニズムに沿った勉強法により記憶の効率が格段に上がった。

 また、明確なビジョンを持ってモチベーションを高く維持するとともに、メンタルケアの知識も生かしながらストレスをなるべく溜めないように勉強を進めていった。

 その結果、成績はみるみるうちに上がり、夏の全国模試では第一志望だった大学がA判定となった。この結果を受け、私は第一志望を上方修正し、現役時代にはあまりに雲の上の大学であり、受験することを想像すらしなかった早稲田大学を第一志望とした。

 半年後、いざ受験。その結果、私は早稲田大学に合格した。


 この成功体験が私の人生を変え、そして、一つのことを確信した。それは、心理学や脳について学びを深める人生と学ばなかった人生とでは、人生の成功率や可能性が全く違うということである。

 私は大学合格後も独学で心理学と脳の勉強を進めた。

 正直、大学時代は人間関係に悩んだ時代だった。そういった悩みもあったことから、心理学や脳科学、哲学、歴史、仏教、禅、ヨガなどの学びを通じて、人間とはどういう存在なのかについて貪欲に学んでいた。

 そういった学びに基づき、なりたい自分像を決め、日々自らの在り方を変えようと強く意識するとともに、コミュニケーションの中にもそういった学びを生かしたことで、学生時代の人間関係とその後の展開が面白いように変わっていった。

野球サークルの幹事長になり、企業のスポンサーを巻き込んで学生野球リーグを立ち上げ、テレビ番組にも出演した。学生野球リーグの主催とテレビ番組の出演というブランディングにより、数名の部員しかいなかったサークルは数十名の一大サークルとなった。

 アルバイトで個別指導の塾の講師をしていたが、他の先生には手に負えない生徒を専門的に担当するようになっていた。褒めて自信を持たせた後、高い目標を持たせることで、生徒のやる気に火を付け、私の受け持った生徒は全員第一志望の学校に合格させた。

 そういった経験の中で気づいたのは、人に影響力をもたらすコミュニケーションをとるためには、何を言うかということ以上に、「どう在るか」の方が重要だということだった。

 大学3年時の進路選択の際には資格を取ることに決め、大学受験と同じく脳の性質や心理学に基づいた勉強法で勉強を進めた結果、公認会計士・税理士の資格も取ることができた。

 まさに今の自分があるのは、心理学など人間に関する学びのおかげなのである。




 近年、心理学や脳の研究は急速に進んでいる。

 人間の心や脳は正に神秘であり、その理解は決して容易ではないが、様々な実験データからその傾向を体系的に説明することが少しずつ可能になってきている。

 大切なのはその内容をいかに日常の現場に活用できる形にするかということである。

 心理学や脳の話は難しそう。

 一般的にそういった印象を持たれる傾向がある中で、明日からの日常が変わる、明日からの意識が変わるように、心理学や脳の話を分かりやすく現場に即した形で翻訳することが本ブログのテーマである。