静かな日曜日…

ケメの最期に近い、ソロライブの映像を見ていた。


昨日頂いたインタビューの記事(1972年秋頃)に、

「丸山圭子さんているでしょ?あの人はすごい意識している。

まずね、僕とね、音楽性がすごい近いの。ケメの女版で言われてるの。

将来楽曲でしのぎを削り合うんじゃないかって今、思う。」

と答えているものがあって、最初そんな風な言葉をプロデューサーから言われたのを思い出した。

このインタビューの中でケメが、容姿ではなく歌を好きになって欲しい、ライブは音楽会に来るように歌を聴きにきて欲しい、きっとそういう人達が自分のファンとして残っていくと思うという言葉は、私も同感だ。


彼はまた、海外には(当時も)ロックやシャンソンとあらゆるジャンルにシンガーソングライターはいるのに、日本はシンガーソングライターはフォークと決めたがって、ジャンルを固定する狭い考え方だと言っている。

それは、その後ユーミンや私達が《ニューミュージック》という名前で、ポップスを歌うシンガーソングライターとしてジャンルを増やしたのだけれど、日本では未だに、何かと固定的なジャンルにはめようとしたがる傾向は変わらない。

最近の若者は、好きなアーティスト以外受け付けない、聞かないという人が増えている。広がらないのは何故なのか…時々わからなくなる。


昨日のライブで、先輩の古井戸の加奈崎さんとも話したけれど、私達はいつも人と違う個性を出す事ばかり考えていた。

吉田拓郎から始まったエレックレコードでは、泉谷しげる、古井戸、生田敬太郎、ケメ、海援隊、ピピ&コット…と、全く異質な個性とオリジナリティーを持ち合わせたメンバーが、同じステージでしのぎを削っていたので、誰一人被らないパフォーマンスを見せた。

泉谷さんからは、

「ステージに出たら、客は自分のものと思え!」

と言われ、叱咤激励されたのを忘れられない。

派手なパフォーマンスに圧倒されながらも、ケメも私もピピコも、ヤジにもめげずに自分の位置を探していた。


この話は、よく学生達に伝えている。

自分の個性、オリジナリティーは自分自ら発見する事が大切だと。

エレックレコードという、素晴らしいアーティストの集団にいたからこそ、お互いにインスパイアされながらできた事かもしれないが…

ただライバル視するのではなく、互いを認め合い、受け入れ、リスペクトし合えたのが、それぞれが本物だったんだと思う。


ケメの一周忌ライブで、皆んながケメを思いながら、様々な思い出話に花が咲いた。

今日最近のライブ映像を見て、あと一度だけでも会って話したかったと思った。

これからは会いたい人には、忙しくても時間を割いて会いに行こうと思う。

後悔先に立たず…


こんなにたくさんのお土産を置いて旅だったケメは、本当にもっともっと世の中に出るべき人だったと残念でならない。

歌い始めた頃の遠い記憶を胸の奥に留めて、私達はまだまだ歌い続ける。