私とちょぼは夜散歩に出かけた。
8時半頃、辺りも見えにくい住宅地を抜け、いつもの公園に向かう途中だった。
ちょぼが地面に落ちてる何かを瞬時に口にした。
私は即座にちょぼの口を見た。
鶏肉の骨だ!!
やばい!!
けっこう太い!!
ちょぼはいい匂いのソイツを離そうとしない。
奥歯から指を入れて抜き取ろうとした瞬間、
”バキッ!!”
という音と共に鶏の骨が折れ、三分の一ほどちょぼが飲み込んでしまった…
即、病院へ行くことにした。
仕方がない…又”催吐処置”か…
あの、食べさせて吐かせるのは見てるこちらも辛いものがあるけど、やってもらうしかない。
折れた骨が万が一胃や腸に刺さったら開腹しなきゃならないかもしれないし…
道が暗くて見えなかったとはいえ、注意力が足らなかった私が悪い…
しかし、食べた後鶏骨を道に捨てる人が信じられない!!
実はちょぼ、鶏肉の骨を拾って誤飲したのは初めてじゃなかった。
それだけ道には誤飲してしまうような食べ物が結構散乱してることが多いということだ。
カラスがゴミを散らかすのかも知れないけど…
でも、とにかく吐き出させなきゃ!!
妻にも事情をメール。
処置室でフードを与えられ、吐くための薬を注射される。
部屋の床に置かれ、そっと見守らなきゃいけない。
ちょぼは周囲の雰囲気の違いを感じ、甘えて私の足にすり寄る。
嘔吐…
…出ない。
肝心な鶏の骨が出ない。
レントゲンで鶏の骨の有無と位置を確認。
ある!!
確かにあった。
先生「けっこう大きいですよ。もう一回吐かせましょう。」
そうこうしてる内に妻も病院に来た。
吐かせるために病院のフードを食べさせようとするのだが、選り好みして食べなかった
妻が自宅から自作の『かぼちゃハンバーグ』を持ってきた。
ペースト状なので吐かせやすい、ということで。
時間をおいて3回目…
…出ない。
レントゲンで又確認…
ある…鶏の骨が。
3回も催吐処理…
普通なら内視鏡を使って胃の中の異物を取り出す。
でも先生はご存じだった。
我々が全身麻酔に抵抗がある、ということを。
吐いて出るなら…とやってくださったのだ。
しかし、催吐処理で出ないならもう手段は一つしかなかった。
先生も我々の気持ちを察して考えて下さってたが、私は自ら先生に内視鏡を使用しての異物除去をお願いした。
全身麻酔…
短頭種犬、特にフレブルには他の犬種よりもリスクが大きい。
獣医学も日進月歩の進歩をしているとはいえ、100%安全とは言えない。
そんな多少でもリスクがあるものを誰も好き好んで、進んでやろうとする飼い主さんはいないはずだ。
先生はいつも妻とちょぼに懇意にしてくださってるのでためらいが見える。
とても優しい先生だ。
いつも「ちょぼちゃんには全力を尽くしますよ~。」
と妻におっしゃってくださってる。
我々も”運命的”な出会い、再会をした先生だし、これまでの診療からも全幅の信頼をしている。
「ご存知のように全身麻酔は100%安全とは言えません。万が一もあります。」
しかし、鶏の骨の折れた鋭い部分が胃や腸に刺さったらどのみち開腹手術だし、そうなった時の方が怖い。
やるしかなかった。
全身麻酔の時の…例の承諾書…目を通す。
…イヤな一文…
でも、信じなきゃ…。
ちょぼを病院に預けて我々が病院を出て行ったのが午後11時半…
家が近いため、病院から電話があるまで自宅で待つ事になった。
家に帰って待つ…
何も出来ないのに落ち着かない。
よくない事ばかりが頭に浮かぶ。
時計を何度も見ながら
「今、麻酔やってるよね。」
「今、異物取ってるのかな。」
妻と二人、ちょぼのいない我が家で、現実じゃないような感覚で過ごしていた。
私は後悔とちょぼに対する謝罪の気持ちに胸が張り裂けそうだった…
家に神社やお寺のお札や祖父の写真を置いてある”神棚”があるのだが、祈らずにはいられなかった。
「どうか、どうかちょぼを守って下さい!!」
何度も何度も手を合わせた。
”神棚”を離れ、又戻ってみると、妻が手を合わせて拝んでいる後ろ姿を見た。
その後妻は何かしてなきゃ落ち着かなかったのか、何故か肉巻きおにぎりを作り始めた。
私の部屋に飾ってあるちょぼの大きなパネル、小さい時の写真、”主”のいないサークル、掛けられてるちょぼの服…それらが胸を締め付けた…
(ちょぼ、お前を守りきれないダメなパパでゴメンな…。)
愛嬌イッパイのちょぼの写真パネルを見てたら、ちょぼがいなくなる生活の悲しさが重くのしかかってきた。そして、万が一…という事態を勝手に思い、絶望感が襲った。
ちょぼがいない静かな我が家の夜…
夜中の2時を回る…3時を回る…
異物を取るだけにしては遅くないだろうか?
一階の私の部屋で妻とただただ待つだけの長い時間…
3時半。
私の携帯電話が鳴る。
「病院からだ!!」
一瞬ためらったが電話に出る。
先生の第一声!!
「取れましたよ~!!」
やった~~~!!
「ありがとうございました。ほんとうにありがとうございました!!」
電話を切ってから
「あの人は”神”だ!!」
私は何度も口にした。
麻酔が覚めたばかりでフラフラしてると言うので、一時間後に引き取りに来るように言われた。
もう、妻と喜びと先生への感謝のオンパレード!!
「やっぱりアイツすげェよ!!」
”先生”が親しみ込めすぎて”アイツ”になったりして…
妻は涙ぐんでた。
病院で説明を受ける。
つまり、鶏の骨の向きが悪く、胃の入口で横になってる状態だったので嘔吐しても出づらかったらしく、内視鏡での取り出しも困難だったので開腹も考えたらしいが、時間をかけて粘り強くやって下さってようやく取り出せたという事だ。
妻「先生、UFOキャッチャーの達人でしょ!?」
取り出した骨、もらってきた。
↓

本当に先生でよかった。
ちょぼの運と生命力の強さに感動した。
我々が病院に迎えに着いたとたん、処置室をダッシュして我々の方に走って行っちゃったらしく、処置室から「こら!!ちょぼ!!」という声が聞こえた。
よかった、元気らしい。
胃が傷ついてるらしく、3~4日の胃の粘膜保護薬を頂いて帰った。
↓

注射器で口に入れる。以前やったことあるので大丈夫!!
ヨーグルト風味だって。
家に帰って落ち着いたのが午前5時。
明け方まで頑張ってくれてありがとう、先生。
本当に、本当に私達は先生に感謝の気持ちで一杯です。
こんなに親身で優しい獣医さんに出会えたこと、心から感謝してます。
妻が「先生凄い!!天才!!」と言ったらピースなんかしちゃうオチャメな先生だけど、もし…もしちょぼに万が一命に係わる何かがあって、先生のもとで天に召されたなら受け入れられます。
逆に、先生以外は受け入れないかもしれません。
何度も言うけど、
ありがとうございました。
家に帰ったら安心して…

午前9時ころまで寝てしまった…。
ちょぼゴハンは
↓

胃に負担をかけないように、妻特製のカボチャのペーストをメインに。
鶏の煮汁で煮たおから、鶏のささみ、まぐろフレーク、犬用チーズが入ってる。
これをフードに混ぜて犬用サーモンオイルかけて出来上がり!!

良く食べる。食欲あってよかった。

見事!!あっという間に完食!!
私達夫婦共にお盆休み。
休み中でよかった。
もともと暑さ大敵のちょぼのために、何処かへ遊びに行こうなんて思ってなかったけど、休み中は我々にたっぷり甘えてもらうことにした。
ま、言わなくてもちょぼは甘えんぼさんなのだが…。
そのかわり、早朝散歩は楽しんでもらえるよう、毎日違う公園で散歩することにした。
15日…狭山公園
16日…野川公園
17日…和光樹林公園
ちょぼ、すンごくはしゃいでてこちらまで嬉しくなった。
今日の和光樹林公園、全力疾走してたな。
↓

”全身麻酔したってこと、そんなに大げさに思わなくても”
とか
”みんな避妊・去勢なんかで経験してるよ”
とか思われるかもしれない。
でも、私達にとっても、ちょぼにとっても、万が一のリスクがあることは初めての経験で、これだけの思いをせずにはいられなかったのだ。
明日で夏季休暇も終わり…
ちょぼがいる…
そんな当たり前のことがこんなに幸せなことだったんだと改めて思ったそんな夏季休暇だった。
今回の事は二度とあって欲しくないことだし、二度と無いようにしたいことだ。
とんだ夏季休暇…
でも、お出かけしたりするような派手な楽しさは無かったお盆休みだったけど、今回は貴重なお盆休みでした。
休暇中、たっぷり甘えんぼのちょぼ。
たくさん、たくさん甘えていいぞ。
ほんとに頑張ったな。
ちょぼ、キミと出会えて本当によかったヨ。