戦国時代は単なる武力合戦の戦いもありましたが、占術合戦
や呪術合戦となったものも数多くあったようです。そのため
全ての大名が占術師や呪術師を雇用して、戦地へ同行させて
いました。従って陰陽師も、この時代には活躍していたそう
です。
そんな中、武田信玄が信頼して雇用していた陰陽師に、判兵
庫という人物がいました。100貫の知行を与えて、そばに
置いたそうです。
『甲陽軍鑑』に、その判兵庫の逸話があります。仕えて20
年ほどになった1569(永禄12)年、夜空に煙を立てる
ような怪しい客星が現れました。客星というのは、それまで
観測されなかった場所に突如現れた恒星のことです。
それがかなり長く居座っていたので、武田信玄が判兵庫にど
ういうことなのか、訊ねたそうです。すると兵庫は、答えま
した。
「これは天下怪異の星です。これから先,末世にて我が国で
は名門家が次第に滅亡するでしょう。そして武家の作法は失
われ、昨日の下人が今日は主となるでしょう」
下剋上と世の激変を予言しているのですが、同時に宗教や占
術もこれまでの常識が通用しなくなるからと言って、この後
優秀な陰陽師は現れないとまで断言してしまっているのです。
何ともネガティブではありますが、下人出身の秀吉が天下を
取ったり、行く行くは家康が武士の社会を変えてしまうわけ
ですから、鑑定が当たってはいるのです。