日本武尊(ヤマトタケルノミコト)は神様として伝えられま
すが、一部では実在した人物のように扱われています。実際
のところとしては、何人もの実在人物をモデルにして創り上
げた架空の人物と思われます。
古事記によると、或る日天皇は小碓命(おうすみのみこと)
に向かって「兄の大碓命が食事に出て来ないが、お前が出て
来るように説得しろ」と命じたところ、その兄が言うことを
きかないので捕えて体を引き裂いて殺してしまったというこ
とです。
小碓命は日本武尊の元の名前です。天皇は日本武尊の野蛮さ
と武力の優秀さを見て、熊襲退治を命じます。
日本武尊は伊勢神宮に仕えていた叔母の倭姫から衣装と剣を
もらい、出陣しました。
ただしこの時の戦い方は、単なるバイオレンスと全く違いま
す。熊襲が開いていた宴の席にまず乗り込むのですが、その
時日本武尊は女装をしていました。熊襲はそれを女装と気づ
かず、美しさに見惚れてしまいました。
メロメロになり、さらに酒の酔いでヘロヘロになったところ
を、剣で刺して退治したということです。
野蛮さは別としても、頭脳的作戦が出来、武道そのものにも
長けていて、さらには女装が似合う。多様性に富んでいます。
何人もの人物を組み合わせたからだとは思いますが、ただそ
れでも「理想を追求したヒーロー像」でもあったわけなので、
そうした多面性を持った人物が好まれたという日本人の性質
も、垣間見えます。