最近は「ハンコなし」で手続きが出来るようにという試みを
訴える識者や政治家も増えてきて影が薄くなりかねないハン
コですが、まあそれでもまだ当分は大事にされ続けるでしょ
う。
ハンコ、つまり印章ですが、セットとして重要なのが、朱肉
です。この朱肉の歴史も古く、とても興味深いものです。
最初に朱肉が使われるようになったのは中国でして、5世紀
になります。ただしそれ以前にも印章はあり、朱肉と似たも
のはありました。粘土に印を押して文書の封印に用いたり、
泥を利用して朱肉のようにしていたそうです。
日本へ印章と共に朱肉が伝わったのは、奈良時代のことでし
た。なので8世紀ですね。官印として使われたということで
す。
奈良の正倉院には、8世紀頃の印影付きの文書が多く残って
いて、やはり朱肉も使われています。ただ当時の朱肉は今の
ように油で塗り固めたものではなく、辰砂という水銀化合物
でつくられたものだったようです。
江戸時代には赤い印影も使われていましたが、使用を許され
たのは武士だけだったそうです。一般庶民は黒い印影を使っ
ていたということで、そうなると「朱」という字が当てはま
らなくなりますね。
赤の印影が庶民にも使われるようになったのは明治からで、
同時に署名捺印という風習も根付いていったとのことです。