江戸時代に幕府が「御庭番」という隠密組織を使って秘密裡
に様々な調査を行なっていたのは、有名です。かつて松平健
さん主演の『暴れん坊将軍』で高島礼子さんが、忍者姿に扮
してその「御庭番」役をされていましたね。
彼らの報告書によって町奉行や老中までが辞職に追い込まれ
た例もあり、その調査は緻密でしかも効力を発揮するもので
した。
勿論御庭番の調査は遠方の地方都市にも及び、諸藩は戦々恐
々としていたようです。隠密自体はどこの藩にもいたのです
が、江戸本家の御庭番となると、その技術も格も違って来た
のでしょう。
その御庭番の調査報告書ですが、不正や蛮行を暴くことばか
りが話題になります。しかしそればかりでは、ありません。
たとえば、1787(天明7)年、駿河国田中藩主の本多正
温が領内をマメに歩き回って庶民の話を聞き集めたり、博奕
を厳重に取り締まるなど、「善政」を続けていた様子が『道
中筋報告書』に克明に記され、幕府に報告されていたことが
わかっています。
この報告書は、「御庭番」が作成したものでした。要するに
御庭番たちは不正だけではなく、「善政」や良き内容の様子
なども、しっかりと報告し、それが幕府によって活用されて
いたということです。