古典芸能の代表としてあるのが、「能」です。これは成り立
ちとして、大陸から伝わった「散楽」に日本古来の民間芸能
や密教の呪師芸などが加わって、室町時代に観阿弥・世阿弥
が完成させたものとして、伝わっています。
ただしその元とされる「散楽」自体が、軽業や呪術、そして
物真似など様々な要素が取り入れられていて、いわば芸能全
般を意味するようなものなので、特に日本人にとって目新し
い存在ではなかったと思います。いわばそれまであった芸能
に広がりを与える役目を散楽は果たしただけかと思われるの
です。
従って「能」は、日本に古来ある芸能の形がさらに1つのジ
ャンルとして完成度を深めただけかと考えられます。
能の演目は、主役となるのが死者や鬼といった超自然的存在
で、その者たちが人間に物語を話すというスタイルが取られ
るのが基本です。
従って、「夢幻能」と呼ばれる形が、基本となっています。
かなり宗教的ではありますが、もっと言えば「宇宙的」とも
言われる要素が多分に含まれているのです。いわば、目の前
にある世界よりももっと目に見えない広大な空間の物語を人
間が演じるわけでして、それだけ奥深い要素が求められるの
で、国が保護し、演者にも高い技術を求めて来たのです。
なので世阿弥の『風姿花伝』が多分に哲学的で宗教的、今の
世の中だと多分に「宇宙が意識されて一部スピリチュアル的
な要素も含まれて」見えるのは、当然のことなのです。