真言立川流が後醍醐天皇らの倒幕に役立ったことは、昨日も
書いた通りです。
この真言立川流の開祖である文観という僧侶ですが、元々は
社会事業を行なういたって堅いオーソドックスな僧侶だったよ
うです。
それが異端と言われる真言密教に転向したのは、呪術に目覚
めたからだと思われます。しかも彼が修得したのは、「ダキニ
天法」だったとも言われています。
ダキニとは、インドで裸体のまま天空を飛翔し、生きた人間の精
魂を取ってしまうという、魔女神だそうです。このダキニを祀った
ダキニ天法は、ダキニの魔性を呪術によって呼び寄せるものと
して、恐れられて来ました。
なので真言立川流における本尊である髑髏は、ダキニにも通じる
という説もあります。だとしたら、奇跡を呼んで鎌倉幕府打倒という
難行を成し遂げようとする後醍醐天皇の趣旨に、ぴったり来ますね。
尚、後醍醐天皇が足利尊氏によって都を追われた後も、文観は同
天皇に軍師として就きます。そして呪法で足利尊氏を倒すべく、後
押しするのです。
この頃、高師直が足利尊氏に反抗したり、尊氏の弟の足利直義が
やはり尊氏に背くのも、文観の呪術が効いたのだという説が、根強
くあります。