『日本書紀』という史記が政治的意図で書かれた部分が強い
ため、随所に捏造が施されていて真実味に欠けるというのは、
もう共通の認識と化しています。
ただ捏造の目的も「藤原氏に都合の良い社会をつくるため」と
いう明確な原因から来たものであることが判明しているので、
意外とわかりやすいです。またたとえ真実味に欠けていても、
あくまで意図的な理由でそうなっているので、それぞれの話に
は大きな意味があることは確かです。
その『日本書紀』の中の神武天皇東征に関して、面白いエピソ
ードがあります。
神武天皇は東征の際、伊勢神宮がある辺りの手前まで来て、
神の毒気にやられ、衰弱しました。要するに、その辺の土地に
何かしら天に操られた怪しい空気が漂っていたわけです。
そこへ現れたのが高倉下(たかくらじ)という者で、「これを持ち
なさい」と言って霊剣を授けました。すると神武天皇一行は精気
を取り戻し、そのまま東征を続けたということです。
九州から大和地方を通ってきた神武天皇一行にとって、伊勢神
宮より先はまさしく「東国」となります。東国は縄文時代にいち早
く発展を遂げ、西国とは違った先進文化を築いて来たことが確
実視されています。そして新たな朝廷を築いたとも、言われます。
『日本書紀』のこの神武天皇に関する記述は、同書の編纂に当
たった者たち(藤原氏と見て間違いないはずですが)がいかに東
を意識し、しかも恐れたことがわかります。その辺の裏側につい
て、明日また触れようと思います。