文豪の森鴎外は、元々は医者でした。陸軍省の軍医総監まで
昇り詰めているのだから、かなりの地位です。しかし、或る失態
をやらかしております。
日露戦争時、脚気が流行りました。江戸時代からあった病気で
すが、手足のしびれや足のむくみから始まり、動悸や歩行困難
を引き起こします。ひどい場合には、心不全で命まで落とします。
ただし原因がはっきりしていて、ビタミンB¹の不足です。従って、
豆や麦、そして肉と野菜といった具合にバランス良い食事を心が
ければ、かかりません。かかったとしても、ビタミンB¹の錠剤を飲
めば治るそうです。
しかしこの当時の日本人は、漬物だけをおかずに大量の白米を
食べるという食生活をする人が多かったため、脚気にかかりやす
かったのです。
森鴎外はそのことに目を向けず、「脚気は細菌による伝染病であ
る」と断定してしまいました。今のコロナウィルスと同じく人口が密
集したところで発症することが多く、しかも1人がかかると次々にか
かったため、伝染病と間違えやすいことは確かですが。
対して海軍病院院長の高木兼弘は、イギリスで医学を学んだこと
もあり、脚気が栄養のアンバランスで起きることを、知っておりまし
た。そのため、海軍の食事に麦飯を導入し、おかずにも西洋風の
肉料理を大幅に導入したそうです。
森鴎外は高木兼弘を、「ローストビーフばかり食べているイギリス
かぶれの偏屈学者」と言って、バカにしたそうです。そして陸軍の
漬物と大量の白米という食事を、改めませんでした。
その結果、日露戦争時の海軍の脚気による死者がわずか3名だ
ったのに対し、陸軍の脚気による死者は2万78千人近くまで及び
ました。
これが、森鴎外の「ヤブ医者疑惑」です。まあ、「偏屈はどっちだ」
と言いたくなる、頭の固さですね。よく小説が書けたなとも思います
が、このことを反省して頭を柔らかく視野を広くしたから、文豪にな
れたのかなとも、思います。脚気で亡くなった人たちは気の毒です
がね。コロナウィルス対策も、何度も言うように、とにかく視野を広く
持って原因究明して欲しいです!