京都が特に有名ではありますが、「氷室神社」という名前の神社が各所
にあります。この「氷室」というのは、天然の氷の保存場所に由来してい
ます。
山の日陰の場所や洞穴に草などを敷き詰め、冬に出来た氷を切り出して
保存しておく場所を、「氷室」と呼んだのです。
この「氷室」は、平安時代より重宝され、貴族たちの間で必需でした。そして
その最も多い使いみちは、お酒のオン・ザ・ロック用なのでした。
現代において、「夏のビール」というのは、風物詩。ビアホール、ビアガーデ
ンが定番で、大盛況になります。下戸の人を除けば、暑い時のビールは人々
の大きな楽しみです。
従って、ビールが日本に浸透しなかった江戸時代までは、辛かっただろう。
暑い夏も、冷酒だけで我慢していたのだろうか?そんな疑問を抱いてしまい
ますね。
確かに、日本酒で我慢していました。ただし、氷を入れたオン・ザ・ロックで
飲んでいたのです。平安時代は、「醴(れい)」と呼ばれる濃くて甘い酒が
最もポピュラーでした。それに氷のかけらを入れて飲むのが、現代における
ビールの代わりだったといえます。
その後も、この飲み方は、ずっと続きます。江戸時代あたりになると、日本酒
の種類もかなり増えていきますが、変わらないのは、今の日本酒よりだいぶ
濃かったことです。従って、主に水割りで飲んでいました。
酒屋が割ったものを出す場合がほとんどですが、割らないものを買って、新鮮
な水と氷を自分で混ぜて飲む人も、少なくありませんでした。ビールがない時代
の夏場、酒飲みにとっても氷は必需だったのです。