「ろくでなし」とか「ろくでもない」という言葉があります。つまら
ない奴とか、当てにならない奴。或いはそういう話のことです。
この語源は、主に「禄高(ろくだか)」を失った武士。つまり浪人
になった武士のことを指して言ったのが発端と、主に考えられ
ていました。
しかしもう一つ、説があります。江戸時代までは、「陸」のことを、
「ろく」とも呼んだのです。そして、土の上、「陸地」を指す意味の
他に、「平らなもの」、「正常に機能しているもの」のことも「陸(ろ
く)」という言葉で表現していました。
従って、「ろくでなし」は、「陸でなし」。つまり「正常に機能してい
ない」という意味だというのです。
こういう2説ある場合は、大体両方とも正しいと見て良いのです。
多分、先に言い出したのは、禄を失った武士を指してでしょうが、
盛んに使われるようになった、そして今の意味に近くなったのは、
「陸でなし」の意味が持ちだされてからだと思います。
ここで私が思いだすのは、慶応大学の応援歌「若き血に燃ゆる
者」の歌詞です。
この歌を初めて耳にしたのは、小学校の低学年の時でした。その
瞬間から、最後の一節の詞に、大いなる疑問を抱いてしまったの
です。
「陸の王者、慶応♪♪」
”水泳は、弱くていいの?”
水泳の他、ボートやヨットもあります。これらは、負けても良いので
しょうか?
その疑問は、40年以上、解決されることがありませんでした。慶応
大学ОBの知人が何人かいますが、誰も「わからない」と言います。
しかしもしかして、「陸」を昔の「陸(ろく)」の意味で使っているなら、
つまり「まともなルールの乗っ取ったものなら」という意味で使ってい
るなら、納得はいきます。
多分、今歌っている在学生やОBたちのほとんどは、そんなこと考え
ていないでしょう。福沢諭吉は、考えていたのでしょうか?