大学生の時、私は評論家(文芸・映画が中心)の上野昂志さんを囲む
ゼミ(大学とは関係ありません。趣味の範疇)に参加していたことがあ
り、、終わった後、新宿2丁目のパブによく連れて行ってもらいました。
そしてそんなある日、そのパブで飲み終わって帰ろうという時、外から
大きく豪快な話し声が聞こえてきます。
やがてドアが開き、入ってきた人の輪の中心にいたのは、昨日亡くなっ
た大島渚監督でした。
「デケー!」というのが、まず最初の印象。体も声も、大きくて豪快。身長
も高いですが、体格も立派でした。そして上野さんとも旧知のようで、
「何だよ、まだ帰らなくたっていいじゃん。せっかくお弟子さんたちもいる
んだから、とことん飲もうよ」
そんな風に誘っていましたが、結局つきあいませんでした。
「つきあったら、朝までだよ」
上野先生は、そう呟きました。大島監督は、飲みに行っても奥さんの小山
明子さんが迎えに来ることで有名なようですが、たまに、「今日はとことん」
と決めて飲み明かすこともあるそうで、その日はそんな匂いがしていたそ
うです。
私は、内心、残念だった記憶があります。すでに劇団で役者活動は始めて
いましたが、別に自分を売り込もうとかいうのではありません。ただ、何か
面白い話は聞けそうな気がしましたから。
まあそれはともかく、威風堂々という言葉がぴったりの、あの強烈な印象
が、まだ頭に残っております。
昨年から、親しくしてもらった谷口節さんは別としましても、その他にも色
んな人の冥福ばかり祈っている気がしますね。ということで、今回もなの
ですが、日本映画に新風がどんどん吹いて発展、隆盛することが何より
の供養だと思います。